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今思えば、彼女が一番笑っていたのは、この日だった。
翌朝、起きると吐き気が青嵐だった。ベッドからなんとか体を起こしたところで、僕が寝ていたのは薄い布団だったことを見留めた。
水を飲んで、顔を洗って、その全てを諦めた後、重い靴を引き摺って薬局に向かった。
深窓の令嬢がくれた薬瓶を探したが、それらしき薬は見当たらなかった。
空覚えだが、ラベルのない透明なガラス容器に、青のギンガムチェックの蓋が閉まっていた。
テクノポップが流れる店内に、見知った顔を見つけた。
それは一昨日の部活で、スピーチのことを相談した子だった。長い袖を着ていた、こんなに暑いのに。
「あ、今日の部活は休むから、もし君、学校に行くなら、顧問に伝えてくれると、嬉しいな」
急に話し掛けてしまったので、彼女は店を出てしまった。
薬は結局見つからなかった。
その次の日は部活がなかった。"オフ"って云うヤツだ。
吐き気は収まったが、自分が弱い生物になってしまった様な気がしてならない。
念を入れて、鏡を裏表どっちもの面から自分の実像を確認したが、僕のままだった。
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