深窓・令嬢

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 "サア、今週モ始マリマシタ!DJ坂本ノ、Glasgow Window!開カレタ窓カラ、ドンナオ便リガ舞イ降リルノデショウカ?!"  午後六時、ここからは夜だ。毎週金曜のこの時間が好きで堪らない。  お下がりのラジオは蛍光色、中の電池は腐りきっている。  こんなに面白い番組を週に一度しか電波に乗せない放送局は、馬鹿である。DJ坂本のような、美声の持ち主が、本来関わってはいけない馬鹿なのである。  お便り…いつか勇気が湧いたら、送ってみようかな…そのとき、送るなら、内容は…  "マズハコチラ、ラジオネーム橋館サン。"  気持ちが悪いかもしれないが、彼女への情意を赤裸々に綴ろう。  "コンバンハ。私ハ坂本サンノコエガ大好キデス。"  "声"に感動した最初で唯一の体験はあなたです。とか。  "初メテソノオ声ヲ聞イテカラ、何カ、神秘ガ宿ッテイルヨウナ気ガシテナラナイノデス。例エルナラ、"  例えるなら、シチリアの空、ハチドリの瞳、泉の奥で割れる清泡(あぶく)
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