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一生消えない傷を負わせた相手に頼み事をするなんて常識外れにも程がある。
でも、こいつは仲間がカツアゲされているのを見たらホホジロザメ相手でも立ち向かって来るような男だ。ライフセイバーになっているのなら、今だって、誰かを救えている。
こいつになら、猫を任せられると思った。
魚が跳ねたのか、川の水がぱしゃんと跳ねた音が響いた。
目線だけ上にやると、シャチは少し下を向いて何かを考え込んでいる。さっきまでの陽気さは陰を潜め、その真剣な顔付きからはシャチの異名の「海の王者」に相応しい威厳が滲み出ていた。
最高の血の味を思い出すために散々オカズにしてきた男は今、俺と子猫にとっての神になっていた。
頭を下げて乞い願うその間も、傷口から血は流れていた。
その血に俺が興奮することはなかった。
終
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