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彼女は、背が低く、黒縁の丸眼鏡を掛け、肌は浅黒く、まあまあふくよかなスタイルだった。
小声で話すけども、常識人で周りに流されずフェアな感覚の持ち主で、穏やかな態度で自分の意見をはっきりと言える人だった。
当時の僕がそこに惚れたわけではないことだけは覚えているが、そこが彼女の一番の美点だったには違いない。
僕は時々年上の女性を好きになったが、その包容力のようなものが心地良かったのだろうか。
郁美さんが例外なく、そのような人柄だったのは、よく覚えている。
周りから知的なイメージが持たれていた彼女は、たしかに知識量が多かった。
さまざまなことを知っているので、内心僕は焦りを感じていたに違いない。
そのような彼女と釣り合う男にならなければならないから、プレッシャーがあったが、それでも僕の気持ちが先走り、観察眼も当然のごとく優れていた彼女は僕の思いに気づいていたようだった。
それで、交際する直前特有のあのくすぐったい時間が僕らのあいだに流れていたのだが、それを一変させる出来事があった。
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