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いつの間にか、板倉先輩の同回生の友人、風見先輩がゼミに遊びに来るようになっていた。
彼はゼミが別で、いったいどこで板倉先輩と知り合ったのは分からないが、放課後、僕らのゼミ部屋によくやって来た。
板倉先輩がはしゃいで話すことをややシャイな風見先輩は淡々と受け答えしていた。
彼は半面、背が高く、大人っぽくジャケットを着こなし、いかにもスポーツが得意そうなスマートな身のこなしは、典型的な好青年だった。
それでいて気取ることなく自然体で朴訥と話すところが、郁美さんの心をつかんだのだろう。
ただ僕は、人の心の裏側まで思いを巡らせるゆとりのないころだった。
風見先輩には顔と名前を覚えてもらい、たびたび板倉先輩らと遊んでもいたから、人柄からして何の悪い印象もなかったが、こういう人と同じ女性を好きになったら僕の恋はうまく行かないだろう。
そういう予感だけはしていた。
僕の妄想の激しさは、 子どものころからだが、それが極まったのが実は大学受験期から在学中にかけてのあいだだった。
それで、僕は先走って彼に対して嫉妬感や警戒心を持っていたことは、今でも否定することのできない事実である。
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