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「はあ? 口が嫌なのか?」
「有体に言うと、そうだ」
「うぉぉい! それってAVの常識覆す発言だぞ!」
門脇の言い方の所為か、なぜか責められているような気になる。
「……そんな常識は知らん。ただ、俺は君の口の中では絶対に嫌だということは分かってもらいたい」
とくとくと説得する家永に、門脇は
「分かった!」
と意外にもスピード快諾した。
「この後、俺とベロちゅーするのに、自分の味がしたら嫌だもんな」
門脇は、全然分かってなかった。
それを聞いて家永は青ざめた。
「き、君は、この後俺にそんなことする予定だったのかー?!」
「違うのか?」
「違う! そんなこと絶対にしない!」
「うーん、さっきから思ってんだが……その、やたらと『絶対』って言うの、やめてくれ。絶対とか言われたら、俺だって傷つく。こう見えて、ガラスハートの持ち主だ」
門脇は拗ねてみせたが、どう見てもそのようなタイプに見えない。
(大抵のものでは傷一つつかなさそうなタフなタイプに見えるんだが)
家永には、門脇は防弾ガラスハートの持ち主にしか見えていなかった。
「ま、そんなこと言えるのも、今のうちだけ。そのうち、家永先生の方から『ちゅーしてくれ』って言い出す。大体、AVの流れはそう」
(……絶対に言うもんか)
口に出して言えば、門脇からまた色々と言われるので、心の内に留めおいた。
「まあ、それはそうと……先生は、俺のことをなんか勘違いしているようだ」
「え?」
「吐き出してもらうのも大事だけど、俺の真の目的は先生を天国に連れて行くこと」
「大差ない」
随分と息が整ってきた家永が素直な考えを口にすると
「ある。俺は堕天使だからな」
と門脇が言う。
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