86人が本棚に入れています
本棚に追加
「堕天使……?」
堕天使と言えば、天国を追い出された存在ではないのか。
「堕天使が、どうやって天国に?」
「物理的にじゃねえ。気持ち的に、だ」
「気持ち?」
「おう。気持ちよく天国にイってもらう。それはもう、堕天使の手練手管で」
多分、門脇の言葉の最後にはハートが付いていたと思われる。
あまりの似合わなさに、家永の背筋がゾクリと寒くなった。
「この俺様が天国に連れて行ってやるって言ってんだ。ごちゃごちゃ考えるな! 感じろ!」
親指で自分を指しながら、なんかいいこと言っている風だ。だが、全然違う意味を言っていると思われる。
ニヤリと笑った門脇が
「あああああ!?」
と、突如余裕のない声を上げた。
「なんてことだ! 余計な事喋ってたら、すっかり先生のもんが萎えちまっているじゃねえか!?」
門脇には余計な事を喋っていた自覚があったようだ。
「……いや。もう十分だ。すまないが、俺のことは構わないでくれ」
上半身をむっくり起こして、家永は門脇にお引き取り願ったが
「それがダメだっつーの!」
門脇は、どーんと勢いよく突き飛ばし、再び家永をベッドに沈めた。
(……)
門脇に適うとは思ってないが、こうも簡単に倒されて家永は自分の非力さを不甲斐なく思った。
再び元の姿勢に戻った家永を、ジロリとねめつけ、門脇は
「少しは自分を構え!」
と、怒鳴った。
「そんなだから……! 先生が自分を構わないというのなら、俺が全力で構ってやるっつってんだよ!」
「……や。それ、本当に遠慮したいヤツだから」
力説する門脇に、家永は冷静に対応した。
最初のコメントを投稿しよう!