第4話 薔薇・5☆

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「堕天使……?」  堕天使と言えば、天国を追い出された存在ではないのか。 「堕天使が、どうやって天国に?」 「物理的にじゃねえ。気持ち的に、だ」 「気持ち?」 「おう。気持ちよく天国にイってもらう。それはもう、堕天使の手練手管で」  多分、門脇の言葉の最後にはハートが付いていたと思われる。  あまりの似合わなさに、家永の背筋がゾクリと寒くなった。 「この俺様が天国に連れて行ってやるって言ってんだ。ごちゃごちゃ考えるな! 感じろ!」  親指で自分を指しながら、なんかいいこと言っている風だ。だが、全然違う意味を言っていると思われる。  ニヤリと笑った門脇が 「あああああ!?」  と、突如余裕のない声を上げた。 「なんてことだ! 余計な事喋ってたら、すっかり先生のもんが萎えちまっているじゃねえか!?」  門脇には余計な事を喋っていた自覚があったようだ。 「……いや。もう十分だ。すまないが、俺のことは構わないでくれ」  上半身をむっくり起こして、家永は門脇にお引き取り願ったが 「それがダメだっつーの!」  門脇は、どーんと勢いよく突き飛ばし、再び家永をベッドに沈めた。 (……)  門脇に適うとは思ってないが、こうも簡単に倒されて家永は自分の非力さを不甲斐なく思った。  再び元の姿勢に戻った家永を、ジロリとねめつけ、門脇は 「少しは自分を構え!」  と、怒鳴った。 「そんなだから……! 先生が自分を構わないというのなら、俺が全力で構ってやるっつってんだよ!」 「……や。それ、本当に遠慮したいヤツだから」  力説する門脇に、家永は冷静に対応した。
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