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「それに、またストーカー出たら怖いじゃない。門脇君は、私の彼氏役でしょ?」
そうでなくとも居たというのにミス慶秀大になってからというもの、美羽に執着する人間が激増した。ストーカー対策に、美羽は全力の下心で門脇蓮に彼氏役を依頼したのだ。
「そうだったな。しゃーねえ。先生、御前崎を学食まで送ってくるから、俺のかつサンド食うなよ」
「ええ? 送るだけ?」
「おう」
「……だったら、私もここで食べる!」
「なんで、そうなるんだよ?」
研究生の門脇が自分の研究室で食事するは普通。だが全く関係ない、しかも学部さえ違う学生が入りびたるのは無理な話だ。
「部外者に触られたくないものもたくさんある。用が済んだら、さっさと帰ってくれ」
家永の正論に、美羽が
「何よー! 職権乱用ー!」
いーっと歯を剥いてみせた。
美羽の悪態に、家永が半ば呆れながら
「……門脇君。カツサンドはちゃんと取っておくから、さっさと送って差し上げろ」
と言うと、モニターに向き直り元の姿勢へと戻った。
(うーん。なんかムカつく言い方だなぁ)
と思うものの
「御前崎。学食行くぞー」
門脇に誘われて、断る御前崎美羽ではない。
「きゃー、ありがと! ではでは、レッツらゴー!」
現金にもご機嫌治った美羽が、門脇の腕をとろうとした。
「あ! ちょい待ち。忘れ物」
美羽の手からするりと抜けた門脇は、踵を返して家永の方へ戻った。
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