第2話 シロツメクサ・1

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 中位将之曰く「月一逢瀬」……月に一度、知己が親友である家永晃一と会う日である。  2月に久しぶりに会えたが、会う店を変えたがために門脇蓮に乱入され、なんとも有耶無耶に終わった。  その次の3月にはいつものこのファミレスに戻してようやく落ち着いて話せる時間が取れたのに 「お前、門脇と付き合っているのか? その後どうなっているんだ?」  しつこく知己に聞かれ 「俺の研究室に入れただけ。それ以上でもそれ以下でもない」  と納得してもらうのに、かなりの時間を浪費したのだ。  それを、今一度繰り返す気にはなれない。  門脇の話をして、また蒸し返すようなマネはしたくない。 「俺は今、幸せだから、もういいんだ。この四つ葉の加護は、家永に」 (……幸せ……)  知己も理科学教師。ラッキーアイテムなど信用するタイプではなかったと思うが。 (誰の影響やら……) 「あ、別に変な意味じゃないぞ」  家永に思う所ありそうな顔などしていた自覚はなかったが、向かいに座る知己が何かに気付いたかのようだ。 「めんどくせー奴らが3月に卒業したから」  と、慌てて説明を付け加えた。  壮絶なまでの美少女っぽい少年と騒がしい男子高校生が約二名ほど、テロップのように家永の脳裏に流れた。 「今の子達は前の子達と同じであまり勉強は得意じゃなさそう。だけど、ちゃんと授業を聞いてくれる。変な謎解きもゲームも女装対決も仕掛けて来ない。俺、今、マジで幸せなんだ」  授業をちゃんと聞くのは至極当たり前のような気がしないでもない。 (面倒な子達を相手にしてたから、なぁ)  ささやかな高校教師としての幸せをかみしめる知己が、少々不憫にも思えた。  家永は有難く四つ葉を受け取ることにした。  四つ葉を眺めながら 「レストラン入口にレンガ敷き詰めた床があったな。その隙間にでも生えてたか」  と推測した。
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