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第11話 夢想花(椿)・2
「先生、さっきからうなされとっしゃらん?」
彩子は心配そうに、家永を覗き込んだ。
ソファの上には家永が一人、俯せになって寝ている。もぞもぞと居心地悪そうに動くと、掛けてあった白衣がずるりと落ちた。
「起こさんでんよかがね?」
「まだ20分経ってないから起こすなよ」
薄手の長袖シャツにチノパン履いた門脇が、白衣を拾って家永にそおっと掛け直した。
「でもいいんかいな? ばり苦しそうけんが」
ソファの座面に左頬をくっつけて、唸る家永の眉間にはくっきりと皺が刻み込まれている。
15分前だったか。
「20分後に起こせ」
と言って、家永がいつものようにソファに向かった。ご丁寧に脱いだ白衣を掛け布団にして、すぅと気持ちよさそうに寝入った筈なのに、途中から
「うーん。いいのか?」
「20分だけならいいか」
と、何やら寝言で一人問答を繰り返している。
(どんな夢を見てんだろう?)
門脇が不思議そうにしていた所に、「約束ば果たしてもらうったーい!」と彩子がやって来たのだ。
「ま、どんな悪夢見てても起きたらスッキリするだろ。それより、中途半端に起こされる方が気の毒だ」
なるほどと思い、彩子はうなされる家永を起こさないことに決めた。
「じゃあ、これでフランケンシュタインの仮装を」
異素材の組み合わせでできたツギハギのしゃれたジャケットを押し付け、彩子は門脇の顔に縫い目のメイクを施した。
「わあ、ばりかっこよか! 先輩の凄み、ワイルドさ、人間性、どれも最高に際立っとる!」
彩子自身も理科学生ならではの自前の白衣を羽織り、
「だったら、うちはマッドサイエンティストったい」
ちゃっかり門脇とペアの仮装を楽しんでいた。
時間になったら家永を起こし、門脇は彩子と共に中庭のハロウィンパーティに行くつもりだ。
「せっかくだからこの仮装、家永先生にも見せよったい」
「そうだな」
門脇は時計を見た。
(後3分か。待ち遠しいな。先生、俺達を見たらびっくりするぞ)
家永が起きるまで、後3分。
門脇の顔を見て家永が絶叫するまでも、後3分のことである。
ー第11話 夢想花(椿)・了ー
【余談】中庭にて。彩子は、カラスミ効果でこっそり美羽を出し抜こうと思ってましたが、美羽がゴシックホラーぽい仮装してたんで、むかつき、キャットファイト勃発しちゃいました。
【関連イラスト】美羽の仮装はこちら。https://estar.jp/novels/26223419/viewer?page=90
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