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(不安、憂い、願望……。つまり何でもアリじゃないか)
まるで「晴れ時々くもり、ところにより一時雨が降るでしょう」という、どんな天気になっても「当たり」になりそうな優柔不断な天気予報を聞いた時の気分だ。
(いや待て。「願望」ということは……ま、まさか! 俺は門脇君にあんなことをして欲しいと思っているのか?!)
ハロウィンの日に見た悪夢を思い出して、現実にはしてもいない自分の行動を家永は深く反省した。
(そして、あの門脇君の格好! あれも俺の願望なのか?!)
しかも、彩子の所為にしてしまった。現実の門脇はフランケンシュタインの扮装だった。あんなすごい格好はしていなかった。
(あ、あれが俺の趣味なのか?!)
家永は愕然とするものの、これだけは認めたくないようだ。
(あれが願望な訳がない!)
家永は首を振って、自分の考えを否定した。
(あれは違う。あれは以前見た夢の門脇君が、なぜだか分からないがしゃしゃり出てきただけだ。願望なんかと違う)
家永の顔色が、真っ青な気がした。
(うーん。研究室の光線の具合か? なんだか家永先生の顔色が悪いような気がする……)
すぐに体調崩す家永のことだ。油断はできない。
「なんか、顔色悪い気がするけど大丈夫かよ?」
「……大丈夫だ。ちょっと自分の趣味に驚いただけだ」
「先生の趣味? 【実験】とか【研究】じゃないのかよ」
門脇は揶揄った言い方をしたが、家永は至極真面目に
「そんなんじゃなく……、ちょっと思ってたのと違って驚いた」
と青い顔のまま答えた。
「よく分からないな」
「当たり前だ。俺だって自分の趣味が分からないんだから」
さっきから何かがずれている会話をしている気がして、門脇は話を戻した。
「とにかく、アカハラとか関係なく俺の単位は十分取れているんだ。先生に媚びたり脅されたりする必要なんか1mmもねえ」
確かに門脇の成績なら、そうだ。
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