第12話 冬薔薇・1

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「だから、これまで通り俺に頼れ」 「……そうはいかん」 「頑固だな」 「お互いさまだろ?」  パシリさせられることに喜ぶ趣味はない。だが、家永が自分を頼らないというのは不満でしかない。 「じゃあ、せめて、なんでパシリやめさせられたのか言ってくれ」 「だから、それは俺が君に甘え過ぎてたと……」 「そんなんじゃ納得できねえから聞いてんだよ!」  思ってた以上に声が出た。 「……」  家永が驚いて、言葉をなくした。  それは門脇だって同じだ。 (なんで、こんなことに俺は怒ってんだ?)  自分が思ってた以上に苛立っていると思い知って、門脇はわずかに困惑した。  何より家永が黙ってしまったので、怖がられたのではないかと気になる。 (話さないのが、いいに決まっている)  と家永は思った。  門脇はまだ3年生だ。後、二年弱は家永の研究生として過ごす。その期間、気まずい思いをすることになる。 (それは、分かっているが……)  心理学の教官が言うように、あれが家永の本当の思い……不安や憂い、願望を示すのであるのなら、門脇を試すことがよくないと思っているということだ。 (夢の中の俺は、「パシリへの嫌がらせ」だと自分で言ってたし、な) (あの門脇君の酷い格好や、ソファでの出来事は信じられないが……とにかく、後ろめたい実験はもうやめよう)  アカハラだとかなんとか理由を付けずに、世間の良しあしや相手の思いを優先させてきたばかりに、嫌な思いを飲み込んできた。 (それ、自分の思いに正直に行動してたら、どうなっていただろう?)  そう思うと、今度こそ自分の思いを正直に言わなければと思ったのだ。 (今度こそ、自分の思うままに)  未だ少し戸惑う部分はあるけれど、話す覚悟を決めた。  そして気まずそうにする門脇を見ていられなくて、家永は深いため息と共に 「……分かった。正直に言う」  と言葉を吐き出した。
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