第2話 シロツメクサ・2

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 避けたかった話題だが、なってしまったものは仕方ない。 「…………門脇君は元気だ」  家永としては、一番無難な答えを言ったつもりだったのに 「なんだ、その妙な間は?」  と、知己が怪訝な顔をして聞く。 (変に気を回す方が、逆に勘繰られるか)  痛くもない腹を探られたくない。  家永は、ありのままを話すことにした。 「嫌がらせするくらいに、門脇君は元気だ。ついでにミスも元気すぎるくらい元気だ」 「はあ? 嫌がらせ?! あいつ、そんなことを家永にしているのか?!」  ありのままに話したのは、家永の予想とは違い、逆効果だったようだ。 「俺の研究室に決まったことを素直に喜べと言われただけだ」 「あいつ……、研究室に入れてもらった学生の分際で。何を言っているんだか……!」  逆効果の火に油を注いだようだ。  とはいえ、門脇らしいと言えば門脇らしいが。  元担任として送り出した身としては、親友の家永に申し訳なく思う。 「今度門脇に会うことがあったら、ちゃんと言っておく」 「……門脇君に会う予定があるのか?」 「いや、ない」  反語みたいに即・否定された。 「何だ、それは?」 「でも多分……、約束なんかしなくても、あいつは勝手にちょいちょいやって来るから、いつかは会える」 「……」  それもなんだかなぁと思う。  その時の為に知己は 「参考までに、どんな嫌がらせをするんだ?」  と聞いてきた。 「俺は言いたくないのに、無理矢理【門脇君が欲しい】と言わされた」 「……えぇ!?」  にわかに知己の顔が曇る。 「何、それ……?」  複雑な表情に、なんとなくテレが入る。  将之や章の影響を受けたか、 (なんだか、とてもえっちな言葉に聞こえる……)  とは、とても言えない知己だ。
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