第2話 シロツメクサ・2

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「家永っ、……目を覚ませよ」  ぐるんぐるん思考回した挙句、ようやく知己はそう言うと 「うん? 起きているが?」  と言葉通りに受け取られた。 「そうじゃなくっ……!」 「言っている意味が分からんが」  と言いながら、家永は 「腹減った。なんか食おう」  テーブルの脇に差し込まれているファミレスのメニューを取った。 「唐突だな」 「飯を食うには微妙な時間に起きてしまって、そのまま電車乗ったからな。朝飯、食ってないんだ」 「そうか、食え」  そういうと知己は、家永を残して自分は三杯目のドリンクを取りに立ち上がった。  入れ替わりに、先ほどのホールスタッフがテーブルに向かった。 (そりゃ、家永が「門脇がいい」って言うんなら、俺が口を挟むことじゃないけど……)  ドリンクサーバーマシンの前、次の飲み物に迷い、カフェ・ラ・テとカフェ・オ・レの間で指を彷徨わせる。 (インドアで実験のことばっか考えている家永は、大学や研究以外は世間知らず)  高校の理科の授業以外は、どっこい(同レベル)の世間知らずの知己が思う。 (門脇がいいように手玉に取っている可能性があるよなぁ) 「賢い」の上に「ズル」が付く、あの門脇のことだ。 (門脇にとってなんだかんだと言いながらも理解してくれている家永研究室のの研究生になることはいいことだと思ったけど、家永にとってはいいことじゃないかもしれない)  高校生時代にかなり手こずった記憶がある知己は、やはりマシンの前で、顎に手を当てて長考していた。 (というか、あいつ(門脇)……! 俺のこと好きだと言ってなかったか? いや、あれから二年は経ったからそれはいいとして。御前崎のこともあるのに、家永に手を出しているのか?!)  なんか腹が立ってきた。  すると不意に「ピッ」と軽い機械音がして、マシンが反応した。 「……あ」  うっかり機械の釦を押してしまっていた。
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