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第3話 菖蒲・2
慶秀大のミスコンは、エントリーより2週間という時間をかけて行われる。
一次審査はスピーチ審査。第二講堂を使い、審査員はその年の学生会より選ばれた男女5名ずつ、計10名。だが、押しかけた観客の反応も大きく左右される部分もある。
スピーチ審査が取り入れられたのは、元々、ミスは大学の広報を担う者だからだ。会話が苦手なのは、ミスとしてNG。これは地方出身者には不利に思えたが、むしろちょっと方言があった方が可愛いだの、個性が光ってよいだと、もてはやされる昨今。意外にも有利に働くこともある。
二次では水着審査が行われる。御前崎美羽の親友・近藤大奈は「顔はメイクで誤魔化せるが、肌のハリ艶が出てしまう体は一長一短での改造は無理。普段からの健康的な生活スタイルの審査」だと、水着審査の目的をよんでいる。が、真実は明らかにされていない。近藤のいかにも……な正論は、確かめようがない。二年連続で御前崎美羽がミスに輝いているという点で、審査基準はやはりプロポーションの美しさではないかという噂が流れている。
ラストは特技を披露してもらっての、総合的な審査となる。これまでの80名程度収容の第二講堂ではなく、500人以上入れる大講堂を借り切って、しかもわざわざランウェイまで設置しての盛り上がり様だ。しかも最近は観客が増えてきた傾向で、入りきれなくなっている。ミスコン実行委員会は、もっと広い会場を……とせっつかれているが、大学側との交渉は難航し、また特設ランウェイが他の会場では付けられないことが理由で会場が変えられることはなかった。
やや直情的ではあるものの遠慮のないハキハキとした喋り、本人は隠したがるが完璧なまでのプロポーションの持ち主が御前崎美羽だ。
誰もが御前崎美羽の三連覇を信じていた。
……その少女が現れるまでは。
「ちょっと、美羽。とんでもないライバル出現じゃない?!」
近藤大奈が、第二学食で「九州の名産品フェア」のとり天定食を食べながら、美羽に話しかけた。
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