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「まあ、それなりに」
「……門脇きゅん……」
門脇の発言に、美羽は思わず「君」と「きゅん」が混じってしまった。
「なんだ、門脇きゅんって?」
「え。あ、……噛んじゃった……。てへへ」
美羽は下手くそに誤魔化した。
「とにかく、あんなヤな思いするくらいなら、ミスなんかにならず、おとなしく一般学生をしていればいいのにって思ってる」
なんとも合理的かつ現実的な意見を言うと、門脇は付け合わせの千切りキャベツをかきこんだ。
(確かに門脇君の言う通りかも。こんなに門脇君を心配させて、全然私には関わりなかった後輩の正田さんにも嫌われて……。
でも…………、それでも、門脇君に側にいて欲しいから、ミスになりたいって不純な動機よね)
美羽の思惑など知らずに、門脇は、隣の家永の残り少なくなったカツに目をつけた。
「先生のカツ、まじで美味そう。俺のと一個トレードしろ」
強制的に家永のトンカツと自分のチキンを一個勝手に取り換えた。
「ひ……! ちょ、何を……!?」
(門脇君とおかずの取り替えっこー……!?)
きっと普段から似たようなことをやっているのだろう。家永は門脇の一方的で強引なトレードにも全然動じない。
斜め向かいからの美羽の怒りの視線にも気付かずに
「……ふむ。タルタルも美味いもんだな」
と、門脇が置いていったチキン南蛮をもきゅもきゅと味わっていた。
「門脇。お前、いっつもそんな失礼なことを指導教官にやっているのか?」
菊池が呆れていると
「いいんだよ。家永先生はほっとくとろくなもん食わねえから。こうやって俺が色んな食材食わせてやってんの」
門脇は、甚だ恩着せがましい言い方をした。
「これが本当のカツアゲ、かよ!」
「くっだらねえ」
門脇が隣の菊池に肘を入れているのを見ながら
「わ、私もミスコン終わったら、門脇君と揚げ物取り替えっこするぅ」
美羽は泣きそうになりつつ、叫んでいた。
「それはできねえな」
「なぜ?! えこひいき!」
「その頃、学食の九州飯フェアは終わってんだろうが」
門脇は冷静に奪ったカツを食べながら突っ込んだ。
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