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第3話 菖蒲・6
最初のエントリーより二週間が経過した。いよいよ明日は最終審査だ。
最終候補は、美羽を含めての7名にまで絞られた。
最終審査は、特技を披露してもらっての総合的な審査だ。
ミスは、これより一年間の大学の看板、広報を担う大切な役割だ。誰がミスによりふさわしいか、審査員10名と会場の反応も加味しての審査となる。ランウェイは絶対に外せないとミスコン実行委員の北野は考えていた。
500人以上収容可能な大講堂だったが、三連覇確実と言われた現ミス・御前崎美羽に真向勝負を挑む1年生の正田彩子の話で盛り上がり、「ぜひ見たい」「もっと広い会場を」という声が、続々とミスコン実行委員会にも届いていた。
それでの北野は、思い切って中庭一帯を「屋外会場」とし、そこにランウェイとステージを組み立てた。
「頑張ったわね、北野君」
近藤大奈が、設営の終わった中庭にたたずむ北野の隣にやってきた。
「屋外なら何人来ても、関係ないし」
と北野も誇らしげに、完成したステージを見上げて頷く。
「立ち見だけどね」
近藤は肩をすくめてみせた。
審査員席だけは、ステージ正面の長机に設置されているが、後は立ち見だ。その代わり収容人数関係なく、いくらでも見れる。なんなら通りすがりに見ていくこともできるということだ。
「新講堂なら1000人はゆうに入れたのに、どうして会場変えなかったの?」
「この特設ランウェイが大講堂用に作られたものだったから、新講堂には合わなかったんだよ」
と、北野がランウェイを支える鉄筋をぺちぺちと叩いてみせる。
急拵えの割にしっかりとしたステージ、そこから中庭を突っ切って延びるランウェイに北野は満足そうだ。
「そっか」
微笑む近藤大奈に
「屋外でも大丈夫だよ。音響も照明も全部手配済み。さっき全部チェックし終わったとこ。何ら大講堂と変わらないよ」
と北野は親指を立ててみせた。
「明日は天気も良さそうだし……、きっと盛り上がるわね」
携帯で明日の天気をチェックする。
(美羽、頑張ってね)
正田彩子のことが少し気がかりだが、近藤大奈は夕日を見ながらそう思った。
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