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(あ、酷……)
グラビアアイドルのような御前崎美羽の体型が稀有なのだ。酷い言われように、同じ女性として近藤大奈はハラハラして、ステージ上の正田彩子を見た。
最初に体型の話を持ち出したのは彩子の方だったが、美羽擁護の野次はあまりにも汚い。
しかも、多勢に無勢。ステージ上の彩子は集中砲火を浴びた。
お祭り騒ぎだったミスコンの空気が、一気に険悪なムードに流れて行った。
「……」
何を言い返すでもなく、彩子はひとしきり野次を聞いていた。
かつてないほどの険悪な雰囲気になったミスコンに、実行委員の北野もステージ下の大奈も、じっとりと手のひらにかいた汗ごと握りしめる。
彩子がさらに何か言おうものなら火に油。この嫌な流れを元のお祭りムードに戻すには、黙ってさっさと退場するのが良策に思えた。最悪な悪口三昧だが、どうか何事もなかったかのように華麗にスルーしてくれと願った。
しばらく待つと少しばかり野次が収まっただろうか。そのタイミングでマイクを握り直した彩子は一呼吸おくと
「……うちに『女』感じなくて上等。あんたらみたいなゲスに、そんな目で見られちょうない」
売り言葉に買い言葉、ヘイト発言にヘイト発言でご丁寧にお返した。
北野と近藤大奈は思わず
(……最悪だ……)
と目を覆った。
一気にミスコン会場に火が付いた。
「ひっこめ、棒! 凹凸ねえ女!」
「どけ!」
「さっさと御前崎さんと交代しろ!」
「いつまでそこに居る気だ?!」
「どけって言ってんだろ?!」
「とっとと帰れ!」
「背の高い女なんか、かわいげねえんだよ!」
まるでシャワーのように罵詈雑言が浴びせられた。
理科学教棟に帰るのを諦めてミスコンを眺めていた家永は
(以前観たミスコンと随分違う……。昨今のミスコンとはこんな殺伐とした戦いだったのか)
と時代の変化を憂いていた。
今度ばかりは一向に収まらぬ様子の野次に、呆れかえって彩子は
「あんたらみたいな無知なんしゅ、セリとトリカブトでも間違うて食うたら良かがね」
ニヤリと嫌な笑顔を浮かべて言った。
次の瞬間、
「お前の方が死ね!」
ランウェイの最先端にいる正田彩子向かって、何かが飛んできた。
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