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「……ってか、この会話自体がデジャヴなんだが」
と門脇は呟いた。
「デジャヴ?」
「うーん。さっきから思ってたんだが、この話、なんか二回目のような気がする」
「まさか。うちはこがん話、人に話すんは初めてっちゃよ」
不意にガチャリと音を立てて、家永研究室のドアが開いた。
「……そういうことだったのか……」
呟きながら菊池がゆらりと現れた。
その現れ方が、ラスボス装っているようで門脇はイラリとしたが、いつもと様子が違うことに気付いた。
「……菊池先輩?」
「オリーブちゃん。俺も覚えてくれてたんだ。嬉しい……」
目を潤ませて菊池が言うが、彩子に覚えられてた喜びで……という訳ではなさそうだ。
ミスコンの打ち上げでちゃっかり飲んでいた菊池は、すっかり酔っている。足取りも、フラフラしていてなんか危なっかしい。
「菊池、酒臭くねえか?」
門脇が聞くと
「ちょっと一杯ひっかけてきた」
仕事帰りのサラリーマンみたいなことを菊池が言う。
「オリーブちゃんがこっちに来ていると聞いて、(主に御前崎ちゃんが)すっげ気になって、ちょっと覗きにやってきた」
「ちょっと? 覗きに?」
「そんなレベルじゃなかろうもん」
もはや乱入としかいいようのない登場の仕方に、門脇も彩子も引いていた。
「……オリーブちゃん、怖かったねぇぇぇ」
これ以上深堀されて美羽のことを気取られてはかなわぬと、菊池が彩子に再び話を振った。
「うん。……いんや、ううん」
一旦は首を縦に振った彩子は、次の瞬間は横に振り直した。
「?」
菊池がキョトンとしていると
「あの日あがん大勢でたかられたんは怖かったけど、実家出ての兄ちゃんとの二人暮らしは楽しみやったし、それより……何より門脇先輩に会いたかったけん。こっちで受験する高校は、迷わず【東陽】にしたっちゃ」
菊池と同様に赤い頬の彩子が言った。
「それほどまでに、門脇に会いたかったんだ?」
「いや。ぁ、まぁ……。……そう……なんだけど……」
しどろもどろになって彩子の声量は、フェードアウトしていく。
反対に菊池は、ずかずかと三人のいる長机までやってきて、当然といわんばかりにパイプ椅子を出して彩子の隣に座る。そして目に入ったポテトチップスをひと掴みすると、口に放り込んだ。
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