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「高校入学してみたら、門脇が御前崎ちゃんと一緒でショックだった?」
話を蒸し返されて
「おい、菊池……」
(こいつ、絶対に一杯どころじゃなくかなり飲んでいやがる……!)
門脇がこめかみに血管を浮かせて怒った。
門脇の怒りに、焦ったのは彩子の方だった。
「いや、いいっちゃよ。こがんかっこよか門脇先輩やもん。彼女おって当然。しかも東陽高校で一番の美人と噂に高い御前崎先輩やけん、お似合いのカップルと思うちょった。やけん、うちは見てるだけで良かったっちゃん」
「ただ……御前崎先輩と家永先生が一緒の所見て、なんで門脇先輩を裏切って……って思って」
そこで彩子は、家永当人の前だと気付いて「ぁ……」と、自らの手で口を塞いだ。
「……だから、いちゃついているように見えるって言っただろうが」
怒りの矛先を家永に向けると
「本当だな」
家永は、どこか他人ごとのように言うだけだ。
「え、何? 違うと?」
「まっっっっっったく。そんな事実は皆無だ」
貯めまくって家永が返事する。
「そ、そうなん?」
と、今度は門脇に聞く。
(知己先生のことが大好きな家永先生だからな)
「万に一つも、それはねえ」
門脇も自信満々に言うと、菊池が素面に戻り
「門脇よ。なんで家永先生の気持ちをそんなに把握してんだよ。お前のその自信が怖えよ……」
と、なぜか泣きそうになっていた。
「あれ? それなら、どうしてミスコンに出ることに?」
と菊池が聞いた。
「御前崎先輩と家永先生の密会疑惑を見た後に、家に帰って、兄ちゃんに相談したっちゃん」
「また、兄ちゃんか……」
「はるばる長崎まで帰ったのか?」
「ううん。兄ちゃん、こっちで就職したけん、まだ一緒に住んどるんよ」
「……そうだったか」
「先生は、もう少し卒業生の進路を把握した方がいいんじゃないか?」
門脇が言うと、家永は「う……うむ……」と口を閉ざした。
「うちも怒りまくってて、ずっと内緒にしてた門脇先輩のことをうっかり兄ちゃんに喋ってしまって……。すると兄ちゃんは
『門脇はいい奴だから、兄ちゃんは彩子を応援する。ユー、ミスになって門脇と付き合っちゃえYO!』って言わさるっと」
「オリーブちゃんのお兄ちゃんは、ノリが……なんかアレだな」
せっかく菊池がオブラートに包んで言ったのに、
「軽いな!」
門脇が菊池の包んだオブラートを剥ぎ取った。
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