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『だから、さ。先生も家永先生に電話してみてくれ』
「そりゃ、俺も家永が心配だから電話くらいするが……」
門脇の真意がいまだ分からないが
『【するが……】じゃねえ! いいから、やれ! 今、すぐにだ。で、終わったら俺に報告しろ』
と言うなり、電話を切られてしまった。当然、意図を聞き出す前に。
門脇のあまりにも横柄な態度に、言う通りにするのもなんだか癪だが、それ以上に家永のことが心配だ。
(ぶっ倒れてるんだろうか? 講義の仕事にも出られないくらい)
すると
(……あいつなりに、すごく心配しているんだろう)
と思えてきた。何せ(……門脇だもの)と考えたら、横柄な態度も溜飲が下がる。
言われるがままに、知己は家永に電話した。
「……」
だが、いつまで経ってもコール音のみで、家永は一向に電話に出ない。
気付くと話が聞こえた卿子とクロードも、何やら心配そうに知己を見つめている。
(そうか、二人も家永と全く知らない関係じゃない)
今年の2月、自分を最高の美少女だと自負する男子高校生・梅木敦と、なぜか女装対決する羽目になった。その時に家永が見に来てくれ、知己のバックアップ務めたクロードと卿子に挨拶を交わしたのだ。
(……どっちかというと俺は見られたくなかったが)
どうせ梅木敦(※)がペラペラと喋りまくったんだろう。女装対決の情報掴んだ門脇が、面白がって家永を誘ったと思われた。
そうこう考えていたら、コール音はゆうに20は超えたと思われた。
さすがに諦め、心配そうにみつめる卿子達に、眉毛を下げて緩く首を横に振る。すると、ますます卿子達は心配そうに黙って知己を見つめるのだった。
「門脇に頼んでみます」
二人を安心させたいのもあるが、それ以上に家永が心配だ。
一刻も早く事情を掴みたい。
知己は門脇に電話をかけ直した。
門脇は1コール途中で出た。
「出ない」
知己が端的に報告すると
『相手が知己先生でも出ないとなると、事態はかなり深刻だな』
ぼそぼそと門脇の感想が聞こえる。
「門脇。俺、今から家永の住所を教えるから……」
『助かる。行って様子見てくる』
知己の言葉を遮って、門脇はまさに今、知己が頼もうとしていた言葉を言った。
※敦、濡れ衣です。喋ったのは、クロードです。
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