第4話 薔薇・4

5/6
前へ
/208ページ
次へ
 確かにイオン飲料(スポーツドリンク)を飲んでから、眩暈は収まり動けるようにはなったが、以前、頭痛だけは残っている。 「俺の渡したDVD観れねえほど元気ねえのに、まだ仕事する気か?」  鞄に残ったまま、手つかずの差し入れを門脇は思い出して言った。 (いや、あれを元気のバロメーターにされるのは、ちょっと……)  学習した門脇は、今度は家永に反論する暇を与えない。立て続けに 「あんたのその頭痛、具合の悪い体からのSOS(発信)じゃねえのか? そんなことも分かんねえのか?」  またもや自分の頭をツンツンと突いて見せる。 「昨日からデータ解析で仕事が難航してただろ? そりゃいくら考えても捗らねえわけだ。その時から体調悪かったんだから」 「昨日のあんた、すっげきつそうだった。モニターからの光の所為か、夕方の光線の具合かと俺もうっかり見過ごしたけど、思い出したらすっげ顔色悪かった」 「今日はしっかり寝て、回復しろ。仕事は、データ解析とまとめだろ? 実験みたいに時間に追われるものじゃねえ。明日……いや、回復してからでもできる」 「明日やれることは、今日するな(※)!」  なぜか漫画家の名言みたいなことを言った。 「そして、おかわりをしろ」  最後は、学食のおばちゃんっぽかった。 「え?」  既に大きめの椀によそわれた雑炊を一杯食べたのだが、門脇は更に食えと言う。  まあ家永も24時間ぶりの食事だ。もう少しくらいなら食べれないでもない。 「俺もおかわりするから。ぶっちゃけ作り過ぎた」  門脇は一旦立ち上がり、キッチンまで行くと雑炊を鍋ごと持ってきた。 (※)「明日やれることは、今日するな」はF子F二雄a先生の好きなお言葉で、テジナーニャ……じゃなかった、「仕事に追われない仕事術・マニャーナの法則」にもありました。でも社畜の私は、「今日できることを明日にのばすな」が座右の銘です。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

86人が本棚に入れています
本棚に追加