第4話 薔薇・5☆

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 抵抗する家永の手が空しく空を切る。  ブンブン振り回される手を門脇は器用にかいくぐり 「おー、いい感じに育ってんじゃねえか!」  まだ家永の温もり残るスウェットと下着をぽいっと投げ捨てた。 「さすが俺! いい仕事しているなぁ」  さっきとは真逆なことを言いながら、門脇はむき出しになった家永の下肢に座り直す。 「ちょっ……ちょっと待ってくれ!」  門脇の重みを足に感じて焦る家永だったが、 「うっせ! 堕天使様に命令するんじゃねえ!」  と一蹴された。  門脇は、 「はっはっはー! これぞAV! これこそ俺好みの展開だぁ!」  舌を出しつつ、ばちこーんとウィンクを決めた。  さっきの平野知己の魅惑的なウィンクとは、だいぶ違う。到底同じ行動とは思えない。  下卑た笑顔で、 「さあ、ヤることヤっちまうぞー! お前を、絞りカスにしてやる!」  かなり門脇っぽくカスタマイズされた悪辣非道なる決めセリフを吐いた。 「や、ちょっと……! ヤメロと言っている!」  平賀朋なら、まだいい。  平野知己なら、もっといい。  だが、相手が自分の研究室の学生・門脇蓮はまずい。非常にまずい。  これまで(夢だし。ま、いっかー)的にされるがままだった家永が、無謀にも腕力も体力も有り余る門脇相手に挑む。無駄だと思いつつも、今度ばかりは抵抗しなければ、何か大切なものを失う気がしてならない。 「邪魔すんな!」  門脇は火を吐く勢いで、怒鳴った。  それにも怯まずに必死に邪魔をしてくる家永の腕を、門脇は恐ろしいほどの動体視力で避ける。それだけでなく、あっさりとそれを片手で捕え、ひとまとめにして家永の頭上に固定した。 (これは……?!)  こんなシーンあっただろうか?  いや、ない。 (セリフも門脇君っぽく変わっているし)  堕天使門脇の乱入で、家永の記憶にある本来のAVのストーリーがおかしな方向に進んでいるのだ。
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