第4話 薔薇・5☆

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「……ぃ、いいのかっ? 君は……ぁっ」  どうしても上がる息で、言葉が途切れ途切れになる。 「君こそっ、俺相手に、ぃ、イケるのか……っ?」  門脇蓮こそ、平野知己が5年前から大好きだと語っていったばかりじゃないか。 (夢の中の門脇に聞いたって仕方ない……)  と思わないでもないが、誤魔化すために飛び出した言葉は引けない。 「はあ? 堕天使舐めんなよ!」  なぜか怒られた。 「は、……ぁッ?」 「堕天使は、不特定多数の所に降臨しねえ。好きな奴のとこにしか来ねえんだぞ!」  もちろん、AVにそんな台詞はなかった。AVそのものが門脇の言う「不特定多数」の為に作られたものだ。 「ぃ、意味が分からない、が……?」 「ごちゃごちゃうるせえな! とにかく、こーゆーものは溜め込んでると体に毒だっつーの!」 「や、やめっ! うわぁぁぁぁ……っ!」  家永との話に苛立った門脇は、報復とばかりに手のスピードを1段階上げた。 「こぉの! まだ、出さねえのか!? 強情だな!」 「うぅ、あっ……」  ずちゃずちゃといういやらしい水音が響く。家永は、だんだん目の前が真っ白になってきた。 (いかん! 早くチェンジしてもらわないと……!)  誰でも良かった。  とにかく門脇でない誰かに代わって欲しかった。  家永はこれまでの堕天使チェンジの要領で、 (ひ、ひらっ……)  と考えたが、何せ今の相手が堕天使・門脇だ。平野知己を思い浮かべようとしている端から、強引な門脇の手淫が思考を邪魔して、他の誰をも思い浮かべられない。 「ひぃ……っ!」  平野と叫ぼうとしたのに、何やら悲鳴じみた声になった。 「ああ、もう! 俺は気が(みじけ)えんだ!」  そんなの知ってる。 「さっさと出しやがれ!」 「ぃ……っ!?」  門脇の頭が下がった。  家永は嫌な予感しかしなかった。
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