Ⅰ章――海の伝説

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Ⅰ章――海の伝説

 陽気な季節に誘われ、俺は部屋を飛び出した。階段を駆け下り、クロックスに足を入れ、自転車に飛び乗る。太陽がもたらす熱気を吹っ飛ばし、ペダルを漕いでいく。  畑のあぜ道に止まっている軽トラのそばに人影がある。白いタオルを頭に巻いた、ガタいのいいオジサンと目が合った。 「お、藍原(あいはら)の兄ちゃん!」 「こんにちはっ!」  俺は大きく手を振って先を急ぐ。 「お出かけかい?」  降ってきた声に顔を上げる。女性がベランダから弾けんばかりの笑顔を向けていた。  村島の母ちゃんか。  隣でベランダの腰壁(こしかべ)から顔を出しているのは、村島の弟と妹だ。まだ小さくてあ  陽気な季節に誘われ、俺は部屋を飛び出した。階段を駆け下り、クロックスに足を入れ、自転車に飛び乗る。太陽がもたらす熱気を吹っ飛ばし、ペダルを漕いでいく。  畑のあぜ道に止まっている軽トラのそばに人影がある。白いタオルを頭に巻いた、ガタいのいいオジサンと目が合った。 「お、藍原(あいはら)の兄ちゃん!」 「こんにちはっ!」  俺は大きく手を振って先を急ぐ。 「お出かけかい?」  降ってきた声に顔を上げる。女性がベランダから弾けんばかりの笑顔を向けていた。  村島の母ちゃんか。  隣でベランダの腰壁(こしかべ)から顔を出しているのは、村島の弟と妹だ。まだ小さくてあり余るわんぱくさに参っていると、村島から聞いている。 「はい!」 「気をつけて行くんだよー!」 「行ってきまーす!」 「「行ってらっしゃーい‼」」 「コラ! そんなに体を乗り出したら危ないじゃないか!」  早速怒られてやんの。これもこの季節のせいか。  ―――待ち望んだ季節。夏。  この島には、夏が似合う。  だってこの島は絶景の海があるんだぜ? 楽しまない手はねえだろ!  自転車が下り坂に差しかかり、加速する。海風を切る音と風圧が通りすぎていく。視界の遠くでコバルトブルーの海が広がっている。  今日も絶好の海水浴日和だ! 思う存分遊ぶぞおおおおー!
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