Ⅰ章――海の伝説

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 ひとしきり海水浴を楽しんだ俺たちは、いつもの港に立ち寄った。  港では夜の出港に向けて漁師が準備をしている。準備終了後、朝市などから外れた残り物をかき集め、海の幸であふれたみそ鍋で漁師たちが英気を養っているのだ。  そこにひょっこり現れ、ガン見するということを繰り返していた朝川たちは、図々しくも漁師の輪にお邪魔していたらしい。  鍋に海鮮ものと野菜を入れ、みそをブッ込んでコトコト煮るだけのすごくシンプルな料理だが、泳ぎ疲れた体には最高なんだこれが。しかも無料だぜ? ほんと贅沢な食事だよなぁ。マジでこっちにきてよかった!   さわやかな海風が全身を撫でて去っていく。至高のひと時に浸りながら綺麗な海を眺めていると、褐色の女の子が頭の中でふと甦る。 「キオ、顔がヤバいぞ」 「へ?」
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