6 女王陛下は怒り心頭

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「は、母上……」  いつの間にか扉を開けて立っていた美貌の女王は、夫の執務机のそばまで大股で歩いてくると、持っていた紙の束を机の上に叩きつけ、空いていた椅子に荒々しく腰を下ろした。 「――ピアには、洗いざらい話してもらったわよ」  ロゼルトの喉がごくりと鳴る。 「ふむ……」  妻がピアから聴き取った内容が書かれた書類を手に取ったレンスロットは、答え合わせでもするかのように自分のものと読み比べ始めた。 「ああ、ロゼルトが私に話したことと概ね一致して……ん? ロゼ、君はピアの手を借りていただけじゃなく……」 「最低よ、この子」  フォルタは眉間に深い皺を寄せる。 「近ごろは、しょっちゅう腿の奥に挟ませて、いわゆる――」 「はっ、ははうえっ!」  ロゼルトは大慌てで遮った。 「気高き君主が口になさるようなことではっ」  女王は息子をキッと睨みつける。 「気高き君主の後継者が、純情な乙女を騙くらかしてやらせていいことでもないでしょうっ!」  怒声をとどろかせた後、フォルタはしんみりと声を落とした。 「『最初はお花のつぼみのようにかわいらしかった〝しるし〟が、月日を経てあれほどご立派に成長されたことは、ずっとお手伝いをさせていただいてきたわたしにとっても大きな誇りです』って、目をきらきらさせて語ったピアに、真実を告げるのがどれだけ心苦しかったことか……」 「つ、告げたんだ……」 「当然でしょっ!」 「……ピアはなんて……?」  恐る恐る訊ねたロゼルトを、女王は凍てつくような目つきで見た。 「『お暇をいただきたい』と」 「えっ!?」 「嘘つき王女、もとい、嘘つき変態王子の顔はもう二度と見たくないんですって」  ロゼルトは真っ青になる。 「じょ、冗談だよね? だって、ピアは僕のお嫁さんに……」  母は斬って捨てるように容赦なく言い放った。 「ロゼ、寝言を言うにはまだ日が高いわよ」
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