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8 ひとりぼっちの晴れの日
「お、おはようございます、アレアティさま。いつもありがとうございます」
長身の騎士は、ピアを見下ろして爽やかに微笑む。
「何度も言っていますが〝アルド〟でいいですよ」
「は……はあ」
こちらこそ〝さま〟なんておやめください、といくら頼んでも笑顔で聞き流されることはもう分かっているので、ピアは朝食が載せられた盆をおとなしく受け取った。
「重いですよ。気をつけて」
アルド・スィ・アレアティ。ノーヴィエ侯爵の次男で、城内の女性たちからも非常に人気が高い伸びざかりの騎士だ。
ひとつ年下のロゼルトとは幼なじみで、長いあいだ武術の稽古相手を務めている。
騎士団長自らが指導する〝王女〟のための特別訓練に加わることが許されていた唯一の人物だったため、ピアは「もしかして将来おふたりはご結婚されることになっているのかしら」などと、ちらっと思ったこともあった。
その彼が女王陛下に命じられ、「万が一愚息が居場所を嗅ぎつけて乗り込んできても阻止できるように」と、ピアがいる部屋を警護している。
「ピアさま、今日は特別に午前中からレントと交代させていただきます」
もう一人の警護担当者であるレント・セ・スコロも、アルドと同期の若い騎士だ。二交代制で、いつもならアルドが夜半から正午まで部屋の前にいて護ってくれている。
不思議そうな顔をしたピアに、少し気まずそうに黒髪の騎士は告げた。
「その……私は式典の介添えを仰せつかっていまして」
「あ……」
日付感覚がすっかり鈍ってしまっていたが、ピアは今日がロゼルトの十九回目の誕生日だということを思い出した。
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