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「き、嫌いというか、以前はなんとなく苦手だっただけです。こちらに上がってからは、王配殿下はじめ宰相さま、お医者さまやご進講の先生方も、皆さま温かく接してくださるので、そんな意識は薄れました」
「よかったわ」
王女は満足げに目を細める。
「でも、今あなたが挙げたのはずいぶん年上の男性ばかりよね。もっと若い、同年代の男の子についてはどうなの?」
「同年代の方ですか……。ほとんど接する機会がないのでよくわかりませんが……」
少し照れくさそうに、ピアは『リラと秘密のお城』に視線を落とした。
「このご本に出てくる王子さまは、素敵だと思いました」
「そうなの!?」
王女の顔がパッと輝く。偶然にも、物語の中の王子さまは王女と同じ金髪に藍色の瞳の持ち主だった。
「ピアは、こういう王子さまが好きなのねっ!?」
声を弾ませた王女に、ピアは少しはにかみながら答えた。
「どんなときも諦めずにリラを助けようとしてくれるところが、とっても格好よかったです」
王女はうんうんと何度も嬉しそうに頷く。
「ねえ、ピアが将来結婚するお相手って、この王子さまみたいな人なんじゃない?」
「えっ……」
「きっとそうよ! そんな予感がしてならないわ……!」
◇ ◇ ◇
楽しいはずなのになぜか切ない夢からピアが目覚めると、室内には灯した覚えのないろうそくの火が揺れていた。
その明かりに照らされ、金の髪に藍色の瞳の、あの絵物語の王子さまがピアの顔を覗き込んでいる。
まだ夢の中にいるのかしら……などと考えながら、ぼんやりと姿を眺めていると、王子さまはどこか不安そうに口を開いた。
「ピア……」
わたしの名前をご存じなのねと、ピアはゆったりと微笑む。すると、金色の髪の王子さまはホッとしたように表情を緩めた。
「よかった。まだ近くにいてくれて」
王子さまの指が優しくピアの頬を撫でる。不思議なことに、実際に触れられているようなその感触は、何やらとても馴染み深いもののように思えた。
「王……子さま……?」
「そうだよ。ロゼルトだよ」
嬉しそうに応えた彼を見て、ピアはハッと息を呑んだ。
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