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13 ロゼ、お疲れさま
「どど、どういうことっ!?」
窓辺に立っていたロゼルトは勢いよく振り返り、ほぼ半月ぶりに大きな声を出した。
「あら、聞き取れなかったの?」
息子の部屋を訪ねてきた女王は、面倒くさそうに眉根を寄せる。
「もう一度言うわよ? 立太子にまつわる一連の行事もひと段落したことだし、あなたは明日から静養のため南海岸にあるダソーロ城に向かいなさい。はい、お疲れさま」
「そ、そこじゃないよ。その後!」
「え? 来月にはピアのお披露目があるから、社交の季節が終わるまではあっちにいるように、ってところ?」
「そ、その続き!」
「ああ……」
女王はにっこり笑った。
「ピアには花婿探しのためにいろんな集まりに顔を出させる予定だけど、戻ってきて邪魔しようなんてゆめゆめ考えないでね、って言ったところかしら?」
「そう、それ――って、花婿探しって何!?」
「長いあいだ心を込めて仕えてきてくれたピアに、早く居心地のいい落ち着き先を見つけてあげたいのよ。アホな嘘なんかついたりしない、愛と信頼で結ばれた誠実な伴侶をね」
「で、でもっ、ピアは僕の……」
「――ねえ、アルド」
扉のあたりに控えていた黒髪の騎士に、フォルタは声をかける。
「ピアはなんと言ってるんだったかしら?」
「は……。『お願いですから、絶対にあの方だけはお部屋に通さないでください』と」
端正な顔を歪め、王子はがくりと膝からくずおれた。
「……いやだっ……」
涙をぽたぽたと床に落としながら、ロゼルトは慟哭する。
「ピアが他の男のお嫁さんになるなんて、絶対に絶対にっイヤだああぁ……!」
女王は冷めた眼で息子を見下ろした。
「だから、花婿探しをしてるピアの姿があなたの目に映らないようにしてあげるんじゃないの。――アルド」
「はっ」
「何かと面倒をかけて申し訳ないけど、この子の旅の見張りをよろしくね」
「――かしこまりました」
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