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2 女王陛下は知ってしまった
「……え?」
ロゼルタはぽかんと口を開けた。
「どういうこと?」
「しるしです。例のしるしを持つ人が……」
はっとしたロゼルタは、顔色を変えて身を乗り出す。
「見たの?」
ピアは深刻そうに頷いた。
「どこで? 誰のを?」
低い声で問われ、ピアは少し泣きそうになりながら経緯を説明した。
「さ、先ほど、お飲み物に入れるハーブを分けてもらいに厨房の裏の薬草園まで行ったんです。そしたら、隣の運動場で騎士の方々が訓練を……」
「騎士……!?」
「はい。模擬試合のようなものをなさっていたのですが、対戦を終えられたお一人が上半身には何も身に着けず、汗だくで薬草園のそばにある井戸のほうまで歩いてこられて……」
ロゼルタの眉間に不愉快そうな皺が寄る。
「その騎士さまは、ツタの絡まった柵の反対側にいたわたしにはお気づきにならなかったようで、水を浴びるためにいきなり下着まですべて脱ぎ捨てられて……」
「そこで見たのね?」
「ええ……。とても驚きました……」
難しい表情になったロゼルタを前にして、無理もないとピアは心を寄せる。
女王陛下がお腹を痛めてもうけられたお子さまはこの素晴らしい王女さまだけのはずなのに、どういうわけか唯一無二の立場がおびやかされているのだ。
「――どうだった?」
「え……?」
どうとは……と戸惑うピアの腕をロゼルタは掴み、真剣な眼差しで訊ねる。
「その〝しるし〟は、わたしのより、お……」
「お?」
「お……王者の風格があった?」
「いいえっ! 決してそのようなことは!」
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