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33 どうしてこんなことに? 後
どうしてこんなことになったのか、ロゼルトにもさっぱりわからなかった。
遠くから聴こえてくる祭りの喧噪、室内を柔らかく照らす月明かり。
そして、ほの甘い香りがする寝台の上には――。
「そんなに端に寄っていらしたら、落っこちますよ」
「あっ、ああ、うん、大丈夫!」
ピアに背中を向けて横たわっているロゼルトは、都合のいい夢でも見ているのではないかと何度も疑う。
あんなに警戒心に満ちて冷ややかだったピアが、笑顔はなかったとはいえ「こちらにどうぞ」と同じ寝台を使うように勧めてくれたのだから、にわかに現実とは信じがたかった。
「――お髪が」
「えっ」
後ろから声をかけられただけで、ロゼルトはびくっとしてしまう。
「王女さま時代よりは短めですが、サラサラとしていておきれいですね……。それも〝フサフサ工房〟製なんですか?」
「あ……そ、そうだよ。誕生日の朝に髪を切ってもらったんだけど、ピアがずっと丹念に手入れしてくれてたから大切に保管してたんだ。王女の姿になって舞踏会に飛び入り参加しようと思いついたとき、急いでそれを工房に持っていってカツラにしてもらっ……」
その舞踏会でピアのお披露目を台無しにしてしまったことを思い出し、ロゼルトは途中で口をつぐんだ。
「……そうですか」
感情が読み取れない静かな声でピアは言う。
「――もう、寝ましょうか」
「う、うん」
「その寝間着、本当に窮屈じゃないですか?」
「け、結構ゆったりした作りだから平気だよ」
カツラは着けたままだが、ドレスでは寝づらいだろうとピアが婦人用の寝間着を貸してくれた。
収納には女性にしては大柄な女王のお下がりも入っていたようで、肩のあたりは少々きつめだがロゼルトにも着ることができた。
「じゃ、じゃあ、おやすみ」
「……おやすみなさい」
室内に静寂が落ちる。
しかし、なかなかどちらの寝息も聴こえてはこなかった。
「――昨夜は」
ピアが唐突に話し始める。
「わたしも、すみませんでした」
「えっ」
驚いたロゼルトは、思わずピアのほうに寝返りを打った。
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