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4 たとえば昨夜のふたり 寝室にて
浴室の扉が開く。
裸のロゼルタは、同じく何もまとわず肌を火照らせているピアを軽々と腕に抱き、寝室へと入ってきた。
天蓋つきの大きな寝台に優しく横たえられたピアは頬を上気させ、引き締まった体つきをしたロゼルタを見上げる。
「さらに力持ちになられたんですね……」
「ピアは全然重くないもの」
ジェラール王国では、君主が軍の最高指揮権を持つ。いずれその立場に就くであろうロゼルタは、王女の身でありながら鍛錬を欠かしたことがなかった。
「頼もしくて、素敵です」
「男の人みたいかしら?」
ピアはうっとりと王女を眺め、首を横に振る。
「こんなに美しい男性はいません……」
ロゼルタはあまり嬉しくなさそうに微笑み、ピアの隣で仰向けになった。
「ねえ、ピア。もし私が男性だったら、あなたは妃になってくれた?」
ピアは目を丸くして慌てる。
「わ、わたしでは身分が……」
「伯爵令嬢なんだから十分でしょう」
「でも、わたしは……」
ピアはバレンテ伯爵の正統な長女として生を享けながら、幼くして実母を亡くした後、継母とその連れ子を迎え入れた父によって修道院に預けられた。
母方の叔母が王女の乳母を経て側仕えをしていた縁で、八歳で補佐として王宮に上がり、十一歳のころに叔母が第二子を身ごもって職を辞してからは、ロゼルタの身の回りの世話を一手に担っている。
「ピア、〝もしも〟の話なんだからもっと気楽に想像してみて。私が嫌い?」
「す、好きに決まってます!」
「――なら、お嫁さんになってくれるわね?」
ピアはしばらく瞬きを繰り返した後、ふわりと表情を和らげた。
「考えてみたら、面白い〝もしも〟ですね……。ロゼルタさまが男の人だったら、きっと絵物語に出てくる王子さまよりも素敵だわ」
ピアはハシバミ色の眼を柔らかく細める。
「わたしでは力不足でしょうが、できることならロゼルタさまのお嫁さんになって、ずっとおそばにいたい……」
「ああ、ピア……」
感激したように名前を呼ぶと、ロゼルタはさっとピアに覆いかぶさり、薄桃色の胸の頂を口に含んだ。
「あっ、ロゼルタさま……」
「全身を丁寧に洗ってあげたくらいじゃ、日ごろのお礼が足りないわ」
「そんな……あ、ん……っ」
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