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「飢饉が続いて水害もあったのに、年々税が重くなって領民が苦しんでいるという報告を受けたわ」
バレンテ伯爵は顔色を変えた。
「そ、それは……」
「いい加減な代理人に任せきって十年以上も顔を見せることすらなく、税ばかり上げるように指示していたとのこと。何も手を打たない領主のせいで、豊穣の地はすっかり枯れ果てた荒れ地になっているそうね」
「わわ……私の不徳の致すところで」
「ランデは召し上げて、ひとまず王室直轄領とします」
「そ、そんな……!」
納得がいかない様子で揃って声を上げた父娘に、フォルタは厳しい視線を向ける。
「バレンテ伯爵、あなたには小さなイコローすら手に余るかも知れないけど、爵位まで剥奪されたくないのなら、心を入れ替えてあの地に住んで、領民に尽くしながら次女の再教育に励むことね」
「イヤァッ」
「ご無体な! あの辺鄙な村には、私たちが暮らせるような立派な家屋敷などないのですよ!?」
女王の目つきは更に険しくなった。
「今日も隣国まで宝飾品の買い物に出かけている夫人をはじめ三人の浪費で借金がかさみ、王都の邸は抵当に入っているらしいわね。売り払って返済すれば、田舎なら差額で小さな一軒家くらいは持てるんじゃないかしら」
酌量の余地がないことを悟った伯爵はがっくりと肩を落としたが、事の深刻さを理解できていないカーラは諦めずに猛然と抗議する。
「どういうことですのっ!? 都会派のわたくしにド田舎に住めと!?」
「カ、カーラ、おとなしくしなさい」
「嫌よおっ! こんな屈辱はないわ!」
「カーラ・スィ・フィチーレ、頭を冷やしなさい」
わめき続けるカーラは衛士たちに腕を掴まれて会場からひきずり出され、バレンテ伯爵も半ば呆然としながらその後ろを追いかけていった。
「――さて」
すっきりしたように女王は言う。
「あの子たちはどうなったかしら?」
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