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今日だけよ?次はもっと普通のドレスに…と念を押す瑠璃に、はーいと返事をしながら、叶恵は総支配人室に繋がるドアをノックした。
「お待たせしました。お支度整い…わあ!早瀬さん。いいですね!」
言葉を途中で止めた叶恵の後ろから、え?と瑠璃も顔を出す。
「まあ!ほんと。早瀬さん、とってもすてき!」
「ですよねー!いつも総支配人の横でひっそりオーラを消してますけど、早瀬さんも総支配人に負けず劣らずのイケメンですよ」
「そうよね!それにタキシード姿、とっても似合ってる」
「うん、着こなしもバッチリです!」
叶恵にボウタイを調節されつつ、早瀬は固まって立ち尽くす。
(る、瑠璃さん…そのドレスは、その…)
叶恵の横に並んでいる瑠璃は、至近距離で早瀬の様子を見ている。
(目の、目のやり場が…)
その時、早瀬は殺気立った気配を感じてハッとする。
一生がこちらを睨んでいるのが分かった。
(マズイ、これはマズイ…)
やがて一生は、ツカツカとこちらに歩み寄ると、
「時間だ。行くぞ」
短くそう言ったあと、瑠璃の腰をグッと抱いて引き寄せ、そのまま出口へと向かった。
「え、わっ!一生さん?」
瑠璃が驚いたように顔を見上げるが、一生は構わず歩く。
叶恵が口に手を当てて、キャッとかすかに声を上げた。
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