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そして当日。
事件は起きた。
このレクリエーションは、僕たち中学生徒だけで段取りから発表までを一貫して行う課外授業になっている、訪問先の小学校教師とも打ち合わせを行ってきた。
控えに言って準備は万全だ。
「さすがに、まだ誰も来てはいないか。」
小学校の裏門を集合場所にしていたが少し早く来すぎた様だ。
待ってる間に、何人かの教師とすれ違ったが何とも言えない気まずさを感じてしまうのは僕だけだろうか。早い仲間の到着を祈る。
それから間もなくして、「おはよう、本田君。」と声を掛けられた。委員長の斉藤 由香里だ。
「おはよう、委員長。早いね。」
「何言ってるのよ。本田君の方がずっと早いじゃない。」と委員長は不敵な笑みを浮かべる。
何故分かった。まさか、どこかで観察でもされていたんじゃなかろうか。
委員長の視線は、僕の足元に向けられている事に気付いた。
あっ。 足元には暇を持て余して出来た産物があちらこちらにあったのだ。地面の土に出来た落書き。無意識につま先で描いていたようだ。何とも恥ずかしい…。
ポツリポツリと、メンバーが揃っていき裏門前がだんだんと賑やかになっていく。
1、2、3、4、5、6……。
「あと2人か……。」
「坂井君と、原君がまだ来てないみたい。」
僕の独り言に、相づちを打つように委員長が言った。
時間が経つにつれリーダーを任された責任感からか、次第に焦りとイラ立ちを感じ始めていた。
「まったく。坂井のやつ。」
「ほんと、坂井君ったら。」自然と委員長と呼吸が合う。
「原君が来ないなんて、どうしたのかしら…心配だわ。」
「そうだな。たしかに、心配だ。」
この扱いの差よ。
「あっ。」と委員長が一点を指差すと、遠くから一人走ってくるが見えた。
目を細めて見ると、あれは坂井だ。「坂井だ。おーい、こっちだ。早く来い。」と急げと手招きする。
ぜぇぜぇ。
「いやーごめん。僕とした事が寝坊しちゃったよ。ごめんごめん。」と息を切らしながらようやく坂井が合流した。まったく、あれほど「寝坊はするなよ。」と伝えたハズなのに……。
これで、坂井も含め7人が集まった。
残るは原ただ一人。
もう少し待つしか無いか…。
自然に、僕と委員長と坂井でひとかたまりに、他のメンバーは少し離れた場所で4人ひとかたまりになっていた。
しばし、無言の時間が流れる。
どれほど経っただろう。
人一倍焦りを感じているからか、もう随分待っているように感じる。
時計を見たが、坂井到着からまだ5、6分しか経過していなかった。
「まったく、原のヤツ遅いな。」
「そうね。」
「そうだね。どうしたんだろう。」
委員長も坂井も相づちを打ってくれる。
ひたすらに待つ。
何度も目を細めて遠くを見るが、それらしい影は見えない。
そろそろ到着してもらわないと実際マズイ。
「ちょっと学校に電話を借りてくるっ。」
ただ待つだけの限界が来た僕は、一言告げ一歩前へ踏み出した。
その時だった。
少し離れたメンバーの一人が言った、「ねぇ。これ何待ちなの?」と。
は?
何を分かりきった事を……。
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