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何待ち、そう声を上げたのはメンバーの相沢 晴彦だった。
「決まっているだろ。原のヤツがまだ来ていないんだ。そろそろ来てもらわねば、進行に大きく影響が出てしまう。」
相沢は、少し戸惑った表情を見せると「いや、いや」と目を見開いた。
「原は、今日来ないだろ。」
なんだと?原が来ない?
「原が来ないってどういう事だ。」
まるで掴みかかりそうな勢いで距離をつめると、相沢が少し後ろへたじろいだ。
「い、いや、落ち着けよ、本田。」
これが落ち着いていられるか。
「なぜ原が来ないと分かる?」相沢をこれでもかと睨みつける。
「だ、だって。流れてきただろ。お前にも連絡網が。」
連絡網。
「……連絡網。」
あっ。あれか。
ん?あれか?
「連絡網って、土曜日に流れてきたアレか?」
「なんだよ。ちゃんと伝わってるじゃないか。まぁ、そういう事だよ。」
どういう事だよ!
それにあれは、イタズラじゃ…………。
「ちょっと、アンタたち何騒いでるのよ!」熱を上げる僕たちに委員長が割って入る。
「なぁ、委員長。」
「何よ。」
「今日、原来ないって。」
「えっ!?」
うん。僕も同じ気持ちだ。
「しかも、連絡網で事前に伝えてあったそうだ。」
「は!?」
委員長は、打ちつけたゴムボールの様には良い反応を返してくれる。
実際、僕も訳が分からない。しかし、自分よりも激しく驚く委員長を見ると何だか冷静さが戻って来る。
「ちょっと待ってくれ。少し整理する。」
2人に少し距離をとり一度深呼吸。
どうしてこうなった?
これはどういう状況なんだ。
「連絡網……。」
一度、落ち着いて整理しよう。
1、一昨日、土曜日に坂井から連絡網が廻ってきた。
2、その連絡網はグループ内を出席番号順で伝えられた。
3、たしか内容は……【お腹が空いた、後は残り物で我慢してくれ。】だったハズだ。
電話を切った後に、いろいろ思考したおかげでハッキリと覚えてる。
4、原は来ない。
と言ったところだろうか……だが。
ダメだ。まったく連絡網の内容と、原が繋がらない。
くそっ。
時間が無いがやむを得ない。
僕は何かの間違いであってくれと願い、他のメンバーにも「原は本当に来ないのか?知っていたのか?」と把握の有無を聞いてみる事にした。
皆の回答は、更に僕を悩ませる事になる。
なんと、7人中3人は原の欠席を把握していて、僕を含む残り4人は把握出来ていない。
そんな状況だったのだ。
具体的にはこうだ。
事態を把握していた者。
相沢、伊藤、遠藤の3人。
事態を把握していない者。
近藤、斉藤(委員長)、坂井、本田(僕)。
どうして、こうも割れる。
「なぁ、そんな事より劇はどうするんだよ。もうあまり時間無いぞ。」と相沢らはようやく事態の深刻さに気付いた様だ。
どうやら、相沢らは皆揃って「本田と委員長が上手く調整してくれている。」と考えていたらしい。連絡網の後に、劇の相談や打ち合わせが無い事が逆に問題は解決済みと判断したとの事だ。
………なんとも都合良い解釈の仕方だよ。
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