おなかが空いた

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 冷凍の豚肉のバラをレンジで解凍し、その間に段ボール箱から人参、玉ねぎ、長ねぎを取り出して刻む。ごぼうと蒟蒻は手に入らなかったので仕方がない。 鍋に水を入れて火にかけ、そこに味噌を投入する。目分量で。まだネットが繋がっていたころに「味噌は冷凍庫で保存できる」と知れてよかった。  沸騰したところに豚肉、野菜を入れて蓋をして十分煮込む。  最期の晩餐は豚汁にした。取れたての野菜が使えてうれしい。今できる最高の贅沢じゃないかと思う。  だから、片道三十分のお隣さんの頼み事を引き受けたのはそんなに悪い選択ではなかったのだと思う。お人よしが過ぎると、友人の声が耳元で聞こえた気がした。  いつものように、彼らから野菜の詰まった段ボールを受け取ったその日、「明日、埋めに来てほしい」と頼まれた。「まだ植わっているのは好きにしてくれていい」とも。  彼らの最期の晩餐は何だったんだろう。彼らを庭に埋めた後居間に戻ってみると、テーブルには半分の半分くらいの水が入ったグラスが二つ寄り添っていて、お皿はきれいに食器棚に収められていた。  いただきます、と丁寧に手を合わせ、お椀によそった豚汁に箸を伸ばす。  やっぱり豚汁はバラに限る。大量の玉ねぎの甘味が溶けた濃い目の味噌の味。最高だ。  再び静かに手を合わせた後、用意しておいた錠剤を口に放り込みコップの水をあおると、ベッドに潜り込み目を閉じた。  薬を飲んだ翌日、僕はいつものように目を覚ました。  やっぱり、無理があったのだ。  僕は今、後悔していた。  彼らの頼みなど聞くべきではなかった。  彼らに薬を半分分けるなど、変な情けをかけてはいけなかったのだ。  おそらく彼らは高齢だったから半分の量で足りたのだろう。  これからどうすればいいのか、まるで見当もつかない。  深くため息を吐いた後、のろのろと台所へ向かう。  残っていた豚汁を温め、放置していたお椀を洗い、そこへまた豚汁をよそった。  黙って手を合わせてから啜った豚汁は、昨日よりも味が染みていてとても美味しかった。    
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