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伝えたい
土曜の夜、いつもみたいに一緒にお風呂に入った。
「さえ、またやせた?」
「んー、食欲が戻らなくて。ほら、恋患いだから」
恋患いも拗らせると痩せっぽちになるものなんだな、と他人事のように思った。
「なんか心配だな……」
「この前保健室で栄養剤の点滴してもらったし、大丈夫だよ。なるべく食べる。うん、頑張る」
「明日、何か食べに行くか。何食べたい?」
「んー……ケーキかな。ケーキ食べたい。いちごの」
「ああ、それいいな、カロリーとれそう」
優しくされると、苦しくなる。胸がギューってなって、食べたくなくなる。困った感覚だ。
2人で布団にもぐると、ヒロさんの服を脱がせた。
「さえ?どした?」
「ヒロさん、好き。……大好き」
唇にキスして、あとは体中にキスした。
ヒロさんが気持ちいい場所を探す。どうやったら、官能の感覚が育つかな。半分実験のような気持ちで臨む。
耳にキスした時、ヒロさんの体がビクッてなった気がした。頭の中にメモする。耳。
あとは、胸にキスした時、声が漏れた気がする。胸。
今日のところはこのくらい。ちょっとデータがとれたので、良かった。
実験終わり。あとは気楽に触ろう。焦らないで、少しずつ。
愛の言葉も、もっと探そう。いっぱい伝えたい。
もう1回唇にキスしたら、今度は私が服を脱がされた。あらら。
体中にキスされた。うーん、私のことはいいんだけど、まあいいか。そうか、2人で触り合ったほうが近道かも、と気づいた。
官能。ヒロさんに会うまでは知らなかった感覚。触られたら、やっぱり気持ちいい。体の奥がきゅうってなる。
2人で気持ちよくなれたらいいな。
難しく考えないで、いっぱい触って気持ちを伝えよう。
そんなことを考えていたら、体中で1番敏感なところを触られた。油断した。
「だめっ……触っちゃだめっ……」
言ったけど遅かった。体が跳ねた。
急に恥ずかしくなって、布団に顔を埋めた。
「さえ?」
「見ないで、恥ずかしい」
「こっち向いて?」
「やだ」
とたんにくすぐられた。
「あははっ、くすぐったい!」
「つかまえた!」
簡単につかまってしまった。ずるい。
「さえ、色々考えてくれたの?」
「うん」
「俺のために?」
「ヒロさんのためっていうか……自分のためだよね、ずっと一緒にいたいから」
とたんに抱きしめられた。
「さえ、大好きだよ」
「うん。私も大好き」
次の日は、2人でケーキを食べに行った。
ショートケーキをしっかり1つ食べられたので、ヒロさんはホッとしてた。
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