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 二十年前の繰り返し?まさか…。  わたしは、拾い上げず足元に目を凝らした。二十年前の匂い袋にそっくりだった。だけど、そんなものが今あるわけないだろう。きっと、同じものがまだ作られているだけなのだ。いわゆる定番商品、ロングセラーに違いない。わたしは、それでもなんとなく嫌な感じが身体にはしり、匂い袋から遠ざかろうとした。  座席を変わるのもいいが、手っ取り早く、あっちに行けと言わんばかりに匂い袋を蹴ってやった。  少し遠ざかったが、車内の中程で止まるにすぎなかった。わたしの席から並行にずれただけなのだ。もっと勢いよく蹴ればよかったかな。匂い袋からじっと睨まれているようで気持ちが落ち着かなかった。降りるバス停の少し前で、他の客が乗り込んできた。わたしの近くに匂い袋があった。この新たな客におせっかいな展開、わたしが落としたのではと問いかけられたりするのも面倒だなと思った。  だからわたしは、降りることにした。そこから、乗り換えする電車の駅までとぼとぼと歩くはめになった。タクシーは捕まらず、三十分の道のりが情けなかった。    家に着いたら、身体を労わろう。久しぶりに歩きすぎ、足が棒のようだった。だが、ゆっくりさせてくれなかった。  わたしは、いつも帰宅すると、郵便受けを見る。この日も、帰宅と同時に郵便受けから郵便物を取ろうとした。その時、なにか違和感のあるものに手が触れた。なんだろうと思いながら郵便物と一緒に手に取った。すると、その違和感のものは、匂い袋だった。    何故、こんなものが入ってる?  誰かのいたずらなのか?  わたしは、家の中に入ると直ち鍵をかけ、へなへなとへたり込んだ。  匂い袋は、二十年前のものと似ていた。そして、今日バスで見た匂い袋とも似ている。茶色の匂い袋は、なんでつきまとうのか。  また、匂いを香ろうとしたら気絶するかもしれない。嫌だ。次は、どんな目に合うか、もうよして。  捨てる。それしかない。  わたしは、よろよろと立ち上がりながら外に向かって放り投げた。  放り投げたつもりだったが、跳ね返ってわたしの顔に直撃した。その弾みで匂い袋の中が少し開き、香りが漂いだした。  わたしは慌てていたのだ。窓を開けずに放り投げてしまった。それも、勢いよく、、。  また、気絶する…?    続く
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