とりかえしがつかない。

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 ***  三月の末のことだ。いつもの通り俺達は、ケイくんの家に集まってゲームをしていた。  テレビゲームをすることが多かったけれど、俺達はアナログゲームも好きだったので、トランプをしたりトレーディングカードゲームをすることも少なくない。この日は確か、大富豪をやっていたのではなかっただろうか。 「はい、8ぎり。……4三枚、どぞ」 「三枚ぞろいここまで温存してたんかよこんちくしょう。持ってねえ、パス。……そういえばさあ」  言い出したのは、確かケイくんだったと思う。俺達が集まっていたリビングには、大きなカレンダーが飾られていた。二か月分が一枚になっているタイプだったので、その時は三月と四月のカレンダーになっていたはずである。 「四月一日って、エイプリルフールだよな」 「そうだね。あ、10三枚出します」 「サクヤ、そこは僕に親を取らせてくれるという慈悲はないの」 「ない。こっちだって手札そんなにいいわけじゃないんだから。ほれ、出せる奴はとっとと出せ」 「K三枚」 「出すな!」  ぐちぐちと文句を言いつつ、雑談するメンバー。この日、集まっていたのは五人だった。一緒に遊ぶ面子は十人くらいいるものの、塾があるとかクラブがあるとかで全員が揃う日は少ない。なお、俺とケイくんはどっちも塾通いではなかったので、比較的好きなように遊べる方だったと言える。中学受験する組は、それこそ四年とか五年から塾に入れられてしまっていて正直可哀想だと思ったものだ。  集まっていたのはノッポな長身のケイくん、女の子みたいに可愛い顔をしたいいところのおぼっちゃんのサクヤ、眼鏡をかけたタイジュ、低学年みたいにチビで足が速いタツ、そして俺タクミだった。ああ、あの時の顔ぶれはよく覚えている。もちろんここに書き込むために全員仮名にはさせてもらっているけれど。  ケイくんとサクヤが一つ年下で、タイジュとタツの二人が俺と同い年だった。  でも俺達は特に年上風を吹かせるようなことはしなかったし、昔から近所に住んでいて仲良しだったのであんまり年の差を感じたことはなかったように思う。  だから、その話が出たのは自然な流れだった。エイプリルフール。去年、みんな面白嘘つき合戦をやって盛り上がったものだから。 「今年も嘘つき合戦やんの?去年結構楽しかったもんな」  俺が言うと、いんや、とケイくんは首を横に振った。 「それもいいんだけど、今年はちょっと違うことやらねーかって思ってさ。オレ、面白いおまじないを聞いたんだ」 「おまじない?ネットとかで見かけたの?」 「おう。ユーチューバーが紹介してたやつだけど、あんまり再生回数伸びてなかったからお前らも知らないんじゃないかと思う。せっかくだし、試してみねえ?うまくいったら、嘘が本当になるらしいぜ」 「マジ?」 「おうおう、マジ」  ここにいるメンバーは、みんなオカルトとかホラーとか大好きだった。信じてないというより、怖いもの見たさというのが大きいだろう。みんなで全年齢向けホラー映画を見に行って、ビビり散らかして帰ったこともあるほどである。  嘘が本当になるおまじないなんて、面白そうだ。幸いというべきか、四月一日は月曜日。少なくとも今日集まったメンバーは全員、塾とかクラブで忙しいなんてことはなかったのである。まあ、春休みの宿題が終わってないのにスルーしてたやつは何人かいたのだろうけど――俺も含めて。  どういうおまじないなのか、についてはナイショだと言われてしまった。とりあえず、四月一日月曜日、十一時に近くの公園に集合とだけ決まったのである。
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