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美以子が校舎に引っ込むのを見て、わたしは足元に視線を戻す。
踏んづけてしまって、潰れたいくつものカプセル。ぐちゃぐちゃになって、中身が飛び出している。白っぽい粉、粉っていうか顆粒か。それが。
「……」
それが、わずかに動いたような気がして、さっきは思わず声をあげてしまった。
地面に散ったそれを、しゃがんでまじまじと見つめる。目は良くない。
やっぱり動いているような気がする。動いてるというより、蠢いてるといった方が正しい。蠢いてるなにか。
なんだこれ。なんで。
虫?
うぞうぞと。白っぽい。なにかに似てる。それよりずっと小さいけれど。
うぞうぞうぞうぞ。
うじ。
蛆虫?
――おなかがすくの。
――おなかの虫がごろごろいってるみたい。
おなかの虫。
食べても食べても。
おなかの虫が。
「……」
わたしは意図的に思考を停止させた。
見なかったことにしよう。もしくは気のせい。見違え。眼鏡の度が合ってないんだわ。今度の休みにメンテナンスに行こう。
それにしても、美以子はちょっと軽率すぎる。
清水先輩との付き合いを考えた方がいいような気もするが、向こうは卒業するのだし、まあ大丈夫か。
潰れたカプセルを見ないようにして適当にかき集め、ティッシュでくるんでゴミ箱に放り込んだ。
終
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