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容器をポケットに戻そうとしたとき、ふいに手がすべった。
「あ」
蓋の閉め方が甘かったのか、容器からサプリが地べたにぶちまけられる。
「わっ」
「えっ」
なぜかわたし以上に驚き慌てたりっちゃんが、これまたなぜかぶちまけられたサプリに思いっきり足をおろし……。
「……」
結果、残っていたカプセルは、りっちゃんによってすべて踏みつぶされた。
「……」
「……」
「……ごめん」
神妙に謝る様子がおもしろくて、思わずふきだす。そのままおなかを抱えて笑う。こんなに笑ったのは久しぶりだ。
「いいよ。ちょうどいいっていうか、踏ん切りがついた。せっかくくれた先輩には悪いけど」
返してくれとか、言われないだろう。たぶん。
とりあえず、撒き散らされたサプリを片付けなくちゃ。
「おーい、美以子ー」
渡り廊下の方から、誰かが呼ぶ声がした。見ると、同じクラスのトモちゃんが手を振っている。
「美以子、阿野先生が呼んでたよー。ノート提出してないんだって?」
「え? あっ!」
やばいっ、忘れてた!
「わたしが片付けとくから、早く行きな」
「ありがと、りっちゃん!」
サムズアップするりっちゃん。
教室に戻ろうと、踵を返したとき。
「おうっ?」
突然、りっちゃんが奇妙な声をあげた。
「どうしたの?」
「や、なんでもない。靴下に穴開いてただけ」
「うそ、あはは、りっちゃんってば」
しっかりしてるけど、どこか抜けてるんだよね。
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