ごはんだよ

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「ごはんだよ-」  呼びかけに、五匹の飼い犬が集まってきた。  所定の位置に置いた、餌を入れた皿。みんなまっしぐらにそこへ向かうが、一匹だけ、何故かいつも俺の方に寄ってくる。  こいつは、五匹の中では一番の新参で、半年ほど前に知り合いが、前の飼い主が急死して引き取り手がないというから、すでに何匹もいるので一匹増えたところで変わりはないと、うちで飼うことになった奴だ。  ずっと人に飼われていたからしつけは行き届いていたし、先住犬達との相性も良く、新入りはすぐに我が家に馴染んだ。  でもこいつ、必ず飯の時に俺の所へ来るんだよな。  前の飼い主が、食事を直接手であげていた、とかなのか?  でもうちでそれをやったら、一匹だけ依怙贔屓になるし、物理的に全部には無理だから、うちのスタイルに慣れてもらうしかない。  俺の手をペロペロ舐め、時には指先などを軽く甘噛みして餌をねだる姿は可愛いけれど、甘やかすことはできない。  そう決意して、餌入れの方を指差す俺を、新入りはひたすらじっと見つめてくる。でもどうしてか、俺が餌をくれないのは判っているだろうに、俺を見ながら新入りは涎を垂らすんだ。  こいつの前の飼い主は、いったいどんなふうにこいつに餌を与えていたんだろう。  そういえば、元の飼い主の死因て何だったっけ? 知り合いに聞いても『亡くなった』としか教えてもらえなかったけれど、よそでちらと聞いた噂では、自宅で、かなりおかしな状態の変死体になって発見されたとかなんとか。  ま、たとえ泥棒か何かが侵入したとしても、犬がいる家で、主人がおかしな死に方をするとは考えられない。だって普通、犬は全力で主人を守ろうとするからな。  ま、それはあくまで噂。そんなことを思い出すよりも、今は、俺を見てひたすら涎を垂れているこいつに、我が家でのご飯のルールを教え込むのが先決だよ。 ごはんだよ…完
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