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風邪にご用心③★
今までの経験上、嫌だと言って止めて貰えた試しは無い。
それでも、大知は何とかしてこの暴挙を止められないかと熱に浮かされた頭で懸命に考えた。
そんな合間にも深山は勝手に座薬のパッケージをペリペリと剥がしだし、その効果音にすら恐怖を抱かせる。
パッケージから頭を出した座薬は4センチほど、大人の小指第二関節くらいの大きさもある。
悪夢だ。
いくら恋人でもこんなことをしようとするだろうか、普通。
大知は今まさに目の前で繰り広げられようとしている凶事に大混乱をきたし、思考の定まらない頭で必死にまくしたてた。
「ね、熱は、寝ていれば勝手に下がる。薬を飲んだのだから、あとはもう寝てるだけで問題ない。それに薬というものは口から飲むものだ! そんなもの、俺は挿れない。挿れるのは絶対に嫌だっ」
「こんなに熱があるのに、口だけは良く回るね、君は」
「人の話を聞けっ」
大知はベッドに押し付けようと両肩を押してくる深山の手を振り払ったが、これまた恐ろしいことに びくともともしない。
恐慌状態の大知は喚いた。
「嫌だって言ってんだろ! そんなの子供が使うものだ! 俺は子供じゃない!」
「駄々をこねてるのは子供顔負けだと思うけど?」
「う、うるさ・・・」
「元はと言えば、入浴後に暑いと言って真夏でもないのにエアコンを掛けっぱなしにしたままベッドで寝ずにソファでうたた寝した君が悪い」
「う、」
しかしそれは不可抗力というやつで、ちょっとテレビを見ていて、ついウトウトしただけだ。
しかもすぐに叩き起こしに来たではないか!(そして引き摺られるかのように寝室に連れて行かれベッドに放り込まれた)
だが、彼の言うことは事実なので反論出来ず、大知が口を開閉して、もごもご言い淀んでいると、深山は真顔で畳み掛けてきた。
「それに、早く治って貰わないと君の仕事はずっと僕が代わりにすることになるんだよね」
「ううぅうう」
「まぁそれでも別に構わないけど、どのみちその高熱じゃ眠れないだろう? このままだと熱が下がらなくて明日は休むことになるだろうね。そうしたら明日の会議でかけられる予定の仕事が頓挫して困るのは君だよ」
「!!!!!」
「自分の置かれている状況が理解出来たかな? それじゃ、横になって」
完膚無きまでに言い負かされて絶句している大知の両肩を、まさに駄目押しの如く深山は更に押してベッドに寝かせ、これまたあっさりとスウェットのボトムをひん剥かれた。
「な、な、な、」
「はい、力抜いてね」
呆然自失の間に下半身を晒され、顔が赤くなったり青くなったり(見た目は赤い)忙しない顔色の大知を尻目に、深山は問答無用で膝裏に片手をかけると押し上げた。
「や、やめ、────」
藻掻こうとした途端、ゆるりと後孔の周囲を唾液で濡らされた指の腹でなぞられる。
身体に覚え込まされているその感覚は、高熱に喘いでいる今ですら否が応でも性的なものを彷彿とさせ、思わず おののき、びくびくと身を震わせる大知を更に煽るように深山が汗ばむ首筋に口付け軽く甘噛みしてくる。
それにふと力が抜けたのを見計らい、孔の入り口を撫でていた中指の先が挿れられ、大知は呻いた。
「っ────」
ゆっくりと浅いところを撫でる感触は、指を更に増やすような事をされないこともあり、身の内にゾクゾクとした官能だけを与えてくる。
抵抗がすっかり無くなった大知に深山は指を奧へ進め、勝手知ったる下腹裏へと触れてきた。
「!!っあ、」
こんな体調の時にやめろと大知は拒否しようとしたが、声は掠れた嬌声となった。
数度 指の腹が行き交うだけで腰に疼くような感覚が走り、重たるい欲求が身に擡げる。
「ふ、・・・っぅ、あ」
シーツを握り締め 身体をこわばらせる大知に、中の指を締め付けてしまっている力を抜けという事なのだろう、瞳をぎゅっと閉じていた瞼に深山の唇が優しく触れ、口付けられた。
更に、スウェットのトップスの裾から差し入れられた手の平が胸を撫で、やんわりと突起に触れれば次第に尖りだした先を指の腹で捏ねられる。
「んーー・・・」
胸の愛撫に下肢の力が抜けたところで深山は指を抜くと、開封していた白い紡錘形の座薬を取り出し、すでに唾液で濡れていた孔へ先端をゆっくりと慣らすように埋めていく。
「────っ?」
侵入してくる微妙な堅さの異質感に、大知は思わず下腹に力が籠ってしまう。
すると、耳元を擽るように笑いを含んだ声が囁かれた。
「大知、力を抜かないと座薬が押し戻されて上手く入らないよ」
「っ、う、うぅ」
そんなことを囁かれ、しかも、指と共に座薬をこれみよがしに入り口の粘膜をゆるゆると行き交うように動かされ、大知は羞恥で爆発しそうだった。
涙目になってぷるぷるしている大知に深山は再び小さく笑う。
「早く挿れないと、ここで溶けてしまうよ」
まぁ、座薬はまだまだ沢山あるからいいけどね、と追い打ちを掛けるように囁かれた。
まさしく悪魔だ。
これ以上の羞恥は耐えられない。
大知は身悶えしながらも必死に身体の力を抜こうと努力した。
その努力が功を奏したかはわからないが、深山の指に添えられていた座薬が押し挿れられる。
しかし、やっと終わったかと思っても指はなかなか離れない。
もう我慢できず、大知は文句が口を衝いて飛び出した。
「お、おいっ、深山、いい加減 離・・・」
「まだ押さえてないと出て来るから駄目だよ」
「!?!?!?!」
もう勘弁して欲しい。
駄目押しなのか嫌がらせなのか(おそらく後者)執拗に後孔をぐりぐりと指で揉まれ、本当に泣くぞ!と、大知は喚く寸前だった。
そうして堪えながら ぶるぶる身を震わせている間に、ようやく押し付けられていた指から解放され。
余った座薬は絶対に捨ててやる&こんなことするなんて後で絶対に殴ってやると心に誓う。
だが、そんな事を大知が悶々と考え、憤慨し唸っているのを宥めるように、髪を撫でられ口付けられた。
「早く良くなるといいね、大知」
こんな無体を強いて人を怒らせておいて、そんな優しいことを言わないで欲しい。まさに飴と鞭だ。
良いように やられ放題で、いつも ろくな文句を言えない。
本当はちゃんと怒っているのに!
大知は一生懸命 顔を顰めて深山を睨んでやったが、視線には全く力が籠らなかった。
悔しいが、仕方がない。きっとこれは風邪による熱のせいなのだと納得することにした。
人間諦めが肝心な時もある。
とにもかくにも、風邪を長引かせてまた座薬を挿れられることになったらたまらない。
さっさと寝てしまおうと大知は身を起こし、脱がされたスウェットのボトムを拾おうとした。
その時、全く遠慮のない深山の手が下肢へと伸ばされた。
「、あ・・・?」
先程、緩やかではあっても中を弄られたせいなのか、緩く勃ち上がっていた性器を手の平で包まれ ゆるゆると扱かれる。
「っあ、な、なん・・・」
この時ばかりは全く予期しなかった事に、大知は思考がフリーズした。
熱のせいか、座薬を挿されるという珍事に気を取られていたのか、己の下半身の状態に気付かなかったのだ。
「い、いいから、もう離し、」
射精は確かに気持ちが良いが、それは健康な時であればこそで、風邪でフラフラしている身ではそんな気になれない。
しかし、深山を押しのけようと伸ばした腕は取られ、背中へと回させられる。
だからといって、呑気にしがみついている場合じゃない。
大知は止めさせるために深山の背を叩いたが、ふいに緩やかに扱いていた手付きに微妙な力が加わり性器を扱き上げる。
「っあ、あ」
鈴口から溢れ出した先走りを絡めた指先が丁寧に括れを擦り始め、相変わらずの巧みな手淫に、既に大知の息は浅く早まっていた。
もうここまでくれば抵抗など出来ず、これ以上 羞恥を加速させるような喘ぎ声を出さないようにするのが関の山だ。
亀頭の割れ目をぐりぐりと指先で刺激されれば、気持ち良さにどんどん意識がぼんやりし始めてきた。
「ん、・・・んぁ・・・」
激しい耳鳴りの合間に聞こえてくる己の浅ましく漏れる声と吐息を耳にしながら、大知が俯いていると首筋に唇が触れ軽く吸われる。
そして、這わせられた耳裏へそっと囁かれた。
「早く治ると良いね、大知」
そんな甘言には二度と騙されない。
これはもう絶対に、確実に、悪化する。間違いない。
誰のせいだ!
それでも、喚こうと開いた口からは、やはり罵詈雑言なんてものは飛び出さず。
絶妙な力加減で根元から扱き上げられたと同時に、目の前に光が激しく点滅するような感覚が襲い、大知は促されるまま深山の手の中で疼いて仕方がなかった熱を吐き出した。
熱が、汗が噴き出し、どっと脱力する大知の身を最後まで出すよう更に吐精させながら深山が支える。
「汗もかいたことだし、着替えようか」
ほんっっっとうに、大きなお世話だ。
こんなものは断じて至れり尽くせりなんて言わない。
やっぱり絶対殴ってやると大知は思い直した。
でも、おそらく実行なんて出来ないだろう。
なら、せめて風邪を目一杯うつしてやる。
それくらい当然だ。この苦しみを少しでも味わえばいい。
深山を見上げながら大知はそんなことを思っていたが、人がこんなに苦しくも恥ずかしい思いをしているというのに、何をそんなに穏やかな笑みを浮かべているのかと言いたくなるような表情とともに、深山が甲斐甲斐しく服を着替えさせてくれるので、
大知は憮然としつつも、最初から最後までされるがままだった。
*
*
翌朝。
嫌がらせのようなことを強いられたにもかかわらず、大知の風邪はすっかり治り、熱も無事に下がった。
深山に風邪がうつっていれば少しは溜飲が下がるのに と思っていたが、当の本人は涼しい顔をして朝の挨拶をしてきた。なんて忌々しい。
「治って良かったね、大知」
朝食を用意しながら、深山は まるで “僕のお陰で” と言わんばかりに人の悪い笑みを浮かべている。
あんな看病があってたまるか。
大知はそっぽを向き、せいぜい聞こえないふりをした。
更に次の話に続きます・・・
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