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自覚を与えて②
車内で少し眠ったのが功を奏したのか、猛烈に襲っていた睡魔からは解放された。
それでも気怠い虚脱感と鈍い頭痛はいまだ身体を苛んでおり、足元がフラフラする身を深山に支えられながら、大知は無事帰宅した。
帰宅したものの。
深山の手は大知を捉えたままで、すぐさま寝室へ連れていかれた。
これからされるであろうことが嫌でも予想出来て、それでも助けに来てくれたことを思えば逆らえず、大知はされるがままベッドに座らせられ、性急にスーツを脱がされた。
「っ、深山、待・・・」
彼が怒っていることは間違いない。だが、こちらの言い分も少しは聞いて欲しい。
この状態で妙なお仕置きなどされたら堪らない。
大知は焦りながら もごもごと弁明しようした。
すると、意外にもベッドに押し倒されるような事はされず、素肌の上にいつも寝着代わりに着ているTシャツを頭から被せられた。
呆然としている大知をおいて、深山はキッチンへ行ったのかミネラルウォーターの入ったグラスを手にして戻り、大知へと突きつけた。
深山の有無を言わさない態度に、大知は大人しく口を付け水を飲む。
飲み終わったグラスを深山は受け取ると、グラスを置いた彼は大知へ手を差し伸べてきた。
今度こそ何かされるかとビクビクしたが、その手は優しく大知の髪を撫でた。
「君はやっぱり自分の事がよくわかってないね」
ふいに言われた言葉に大知は顔を上げたが、そのまま言い繋ぐ深山の表情からは怒りは読み取れなかった。
「君は他の人間から自分がどう見られているか考えたことはある?」
「・・・?」
その台詞は、あの商談相手も似たようなことを言っていた。
────“貴方は他人からどう見られているか考えたことがありますか?”
「どうしたら君はわかってくれるんだろうね」
そう言うと深山は小さく苦笑した。
一体何を理解しろというのだろうか。
憮然としている大知に深山は軽く口付けてきた。
触れるだけのキスは、まだ恋人同士となる前、まるで大知をからかうように、戯れのようにされていたあの頃を思い出させた。
「今日はもう寝なよ」
そう静かに言われ、大知は驚きを隠せなかった。
深山は確かに怒っていた。
そんな時は苛立ちを隠そうともせず、彼はいつも大知を抱いてきた。無体とも言える所作で。愛情と、独占欲を知らしめるかのように。
なのに今の素っ気ないとも言える言葉に大知は困惑した。
怒っているならいつものように何か態度で示して欲しい。きちんと言って欲しい。
それとも、大知が “何も分っていない” こと示そうとしているのか。
寝室を出て行く深山の背を見送り、大知はそのまま眠ろうかと思ったが、鈍い頭痛は残ってはいても どうしても酒の匂いとあの男が漂わせていた香水の残り香を洗い落としたくて、軽くシャワーを浴び、今度こそベッドに上がり上掛けを被って目を瞑った。
屈辱的な扱いを受けたこと、それ以上に、大知の迂闊さを責めるような冷淡な深山の態度に悶々としつつ。
大知はぐるぐると思考を彷徨わせていたが、いつの間にか深い眠りに落ちていた。
次回、またまた配慮に欠けたシーンになります。
大体いつも何かが起きてアレなシーンを挟みオチがつく、という流れですので、ご容赦下さい。
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