君に話したいことがあるんだ①★

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君に話したいことがあるんだ①★

*この後、また配慮の足りない微妙な性的シーンとなるのですが、大丈夫そうじゃなかったら次のページの②には進まないで下さい(無茶)  “君に話したいことがあるんだ”  深山(みやま)の思わせぶりな言葉と態度に大知(だいち)がまんまと嵌ってしまった記憶はそう遠いものではない。  あの台詞を再び深山から宣告され、嫌な予感がしつつも業務終了後、大知は深山の自宅に連れ込まれ、もとい、訪れていた。    一体、深山は何を言おうとしているのか。  大知の懸念をよそに、時間は過ぎていく。  それでも明日からは休みというこの状況下で、これからすることなど一つしかない。  入浴後、仄かな間接照明のみの薄暗い寝室のベッドに上がり、戦々恐々としている大知を見て、深山はくすりと笑った。 「今日はずいぶん静かだね」 「・・・」  下手なことを言えば藪蛇となり、墓穴を掘ることになる。  大知は、そんなことはない、とボソリと呟いた。    ここまでは普段通りだ。  抱きしめてくる腕も、静かにシーツへ押し倒してくる手も、柔らかく口付けてくる唇も。  合わせられた唇を促すようにそっと舐められ、薄く開いた合間に差し入れられた温かい舌が歯列を辿り、上顎を舐めていく。  舌が絡む合間に息をつき、そのまま口付けを受けながら、深山の手の平が脇腹を辿りそれは胸へと這わせられる。  親指の腹で乳首が尖るまで何度も擦り揉む挙動に息があがりかけるがやり過ごしていると、ふいに深山のもう片方の手が臀部にまわり、柔らかく揉みながら奧を探るような感覚に、大知は大きく身じろいでしまった。  不本意にも今朝の出来事を思い起こさせられたからだ。  あの時の不快感と今の感覚は全く違うはずなのに、意図せず妙な汗が浮いてしまい大知は焦った。  だとしても、それはほんの僅かなものであり、気付かれる程度はなかったはずだ。  しかし大知の微動な動揺を感じ取ったのか、深山は首筋に埋めていた顔を上げた。 「どうかした?」  まっすぐこちらを見てくる視線と、至極 静かな声で呼ばれるのに大知は益々焦ってしまう。 「な、なんでもない」  大知は視線を彷徨わせた。  その対応こそが何かあることを如実に物語ってしまうのだろうが、なんでもないと繰り返すしか大知には為す術がない。思ったことをそのまま深山に言えるわけがない。  “お前に触られて痴漢に遭ったことを思い出したんだ” なんて、絶対に言えるか そんなこと!  それでなくとも、深山は恋人という関係になってからは大知が他の者と近しく接触することを酷く嫌う。  男が痴漢に遭ったなんて他の者ならば一笑に付される事だったとしても、深山に言えば、ただでは済まない、気がする。  大知は何とか誤魔化すために、身を起こしかけた深山の首裏に腕をまわし抱きしめた。とりあえず表情を見られなければ大丈夫だろう。  だが、より一層身を寄せたせいで、不可解にも早まっている大知の鼓動を感じ取った深山がすでに “何かあった” ことを確信していることなど、当の大知は露知らず。    そのまま穏やかな触れ合いが続き、大知は自身の緊張をやり過ごせたと安堵していた。  すると、ふいに深山が身を起こし、ベッド脇のサイドチェストから何かを取り出した。  深山は小さな黒い箱を持っていた。  訝しげに見ている大知へ、深山はその小箱を差し出した。 「君にプレゼントしようと思って」 「?」  プレゼントと言っても今日は誕生日でもなければ何かの記念日でもない。  大知は手渡された箱を不思議に思いながらも受け取り、蓋を開けた。  そこから出てきたのは、銀色のリングだった。  だが、リングはリングでも指輪ではない。リングには奇妙な中細の棒が付いていたからだ。 「────っ」  それがなんなのか、大知はようやく理解した。  シンプルな形状に光沢のある銀色。紛う事なきアダルトグッズのペニスプラグだった。  手にしたまま固まる大知に、深山は例の恐ろしい笑みを浮かべていた。 「君のために選んだんだ、きっと似合うよ。今日はそれを付けて、僕の話を聞いて貰おうかな。ああ、その前に、君からの話もじっくり聞きたいしね」 「!!!!」  先程の不穏なやり取りは、ちっともやり過ごせてはいなかった。  大知が思わずペニスプラグをボロリと落とすのを、深山はすぐさま片手で難なく受け止める。 「話したくないこともコレを付ければきっと話したくなるんじゃないかな? 素直じゃない君でもね」  深山の口元に浮かぶ薄い笑みに、大知は震え上がった。  
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