旅立つ君へ

1/11
前へ
/11ページ
次へ
 カーテンの隙間から、温かい光が差し込んでくる。  小鳥たちのさえずりと、風にそよぐ木の葉の音。心地良い音に耳を傾けながら、あたしは毛布を口元まで引き上げる。  ふと、枕元に置いた小さな時計が目に入って――  「ヤバっ!? もうこんな時間!?」  あたしはバネ仕掛けの人形みたいに、勢いよく布団から飛び出した。  タンスの中身をひっくり返し、髪をささっと手ぐしで整えて、部屋のドアを大きく開け放つ。  父さんから朝の掃除を頼まれてたのに、まさかまさかの大寝坊だ!  早くしないと、お店を開ける時間になっちゃう!  「うひゃあっ!?」  焦って踏み込んだ足が、階段の角を掠めて大滑り。  すごい音を家中に響かせて、何度も背中を角へと打ち付けてしまった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加