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「ちょっと、いつからお雛様は4月も飾るようになったの?」
「今年は良いの。湿気のない日にゆっくり丁寧に仕舞いたいから」
言われるだろうと予想していた、おばあちゃんの嫌味を受け流す私。
今日おばあちゃんは花見団子と桜餅を持参して、ひ孫の沙里の顔を見にやってきた。
私は「これ、お雛様に供えていい?」と花見団子と桜餅をひとつずつ、そして小さなお酒の瓶を丸盆に用意する。
「なんなの、お酒まで。それにしても、裏のお宅の桜が満開でキレイね。暖かくもなったし、すっかり春ねぇ」とおばあちゃんは桜を眺めながら熱いお茶をすする。
私は桜が見えるようにと、雛人形が飾ってある座敷の縁側の障子戸を開ける。
「ほら、今日は夜まで宴会だね」
私が雛人形たちに声をかけると、ほんのり笑顔になった気がした。
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー
―――あれ?また真っ暗だ。あぁ、あそこに光が見える。
きっと宴会をしているんだな、と私は光に向かって走り出した。
光の先には満開の桜の木が数本あり、嬉しそうに舞う者もいれば、お酒を堪能する者、団子を食べながら桜を眺めて呆けている者、皆それぞれ花見を堪能していた。
「おぉ、来たか。ぬし、感謝するぞ」
「花見じゃ、花見じゃ。美しいのぅ」
こんなにも喜んでもらえるなら、毎年桜が咲くまで出していてもいいかもね、と思いながら私も一緒になって夢の中の花見を堪能する。
「綺麗ですね。まさか願いが叶うなどと思ってもいませんでしたよ」と左大臣が微笑む。
イケメンのその笑顔にほだされて、私はうふふ、と笑った。
「そうじゃ、ちょっと小耳にはさんだんじゃがな。鎧兜の者がゆうておったんじゃ。花菖蒲っちゅう花がもうすぐ咲くと……」
―――花菖蒲!?端午の節句!?……それは諦めてください!!
……そんな夢を見た。
(おしまい)
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