念願のお花見

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 今年の3月は雨降りばかりだ。  時々カッと晴れる日もあるが、長くは続かない。  雨と共に寒さが戻ってきて、なかなか冬物が仕舞えない。  仕舞えないのは服や布団だけではないのだけど……。 「ねぇねぇ、今日沙里(さり)ちゃんの家ってどう?」  幼稚園の終業式が終わり、雨の中、娘を迎えに行くと春香ちゃんママが声をかけてきた。 「え、うち?」  とうとう来たか!と焦る。  ウチの娘と仲の良い春香ちゃん、舞奈ちゃん3人は同じスイミングスクールに通っており、スクールが無い日はどこかの家で遊ぶのが恒例になっている。 「うん、ここのところウチか舞奈ちゃんの家ばかりだったじゃない?今日舞奈ちゃんのトコは旦那さんが夜勤明けで家にいるらしくって、ウチは姑が友達呼ぶって言っているのよ~。沙里ちゃんの家はご無沙汰でしょ?どう?」  そう、最近娘がお邪魔してばかりで申し訳ないな、とは思っていた。  お友達を呼ぶなら掃除をしなくてはいけないが、今日の幼稚園は給食無しの早帰り。相手は子供。ぱぱっと片づけて掃除機をかける余裕ぐらいはある。  だけど…… 「それでね。申し訳ないのだけど、ついでに私達も(かくま)って欲しいの!ほら、家に居たら邪魔かな、と思って」 「あー……いい、よ」 「本当!?ありがとう!じゃあ13時に行くね!おやつは任せてね!」と満面の笑みの春香ちゃんママ。  本当は断りたいけど、理由の重さが二人とは違う。  仕方ない、開き直るしかないなぁ。
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